4通目 天体観測

拝啓 宮沢賢治様


 指先から柚子の香りがする季節となりました。先生におかれましては、どんなハンドクリームを使用されていますか?

 私は柚子の香りがするやつです。



 変なあいさつになってしまいました。でも、今の季節ほど体の末端である、指先に気をつかうことはないのではないかと思っています。



 先生、最近読んだ漫画が素敵だったので紹介させてください。



『瑠璃の宝石』(渋谷圭一郎、KADOKAWA)という漫画です。女子高生るりが鉱物採集の世界へ飛び込んでいくというお話です。


 先生も絶対気に入るお話だと思いますから、是非読んでくださいね。来年アニメ化されますので。予習大事ですよ。


 その『瑠璃の宝石』で、こんな話がありました。




「隕石の大部分は微小サイズでふってきている」




 隕石というと、こぶしくらいとかとてつもなく大きな岩のようなものを想像してしまいます。

 けれども、砂粒の大きさで今もこの地球にふりそそいでいるのです。



 先生、私たち知らないうちに流れ星にふれていたんですね。



 ということは、宇宙人も微小サイズでやってきているかもしれません。

 とてもロマンのある話だと思いませんか?


 台風がきたら宇宙人とばされちゃうんじゃないかって、心配になります。



 もしかしたら、私の髪の毛に絡まっているかもしれませんね。



 ふだん、空を見上げても宇宙の中にいるのだと感じることはあまりありません。


 地球が星で、たくさんの生命をかかえて回っている。




 なかなか、そこまで意識することはありませんが、小さな星が、広い宇宙の中を長い旅をして、大きさを変え、形を変え、そして、私の足元にやってきたのだと想像すると、その隕石の歴史に耳をかたむけたくなります。





 先生は、天体に関する物語を多く残していますよね。


 夜空を見上げる時、先生はどんな気持ちで見ていたのでしょう。



 私は冬の夜空が好きです。夜でいる時間が長く、空気が澄んでいるからです。




 夜空を見上げると、自分は金魚鉢の底にいるのではないかと思うことがあります。


 透明で丸いガラスの底に私はいて、見上げると水面に藍色の雲が流れていきます。


 お月さまの白い光が、夜の色をした金魚鉢をまだらにそめあげています。



 あ、私宇宙にたっている。



 そう思った時、私の足はふわりと浮いて、長いながい旅にでるのです。



 小さな小さな宇宙の星を胸にだいて、今日は宇宙へ旅にでましょう。


 この小さな宇宙の星の故郷を探すのもいいかもしれません。


 双子の星にあいさつしにいくのもすてきですね。



 先生も一緒にどうですか?

 それでは、午前二時に踏切で待ち合わせしましょう。

                                      敬具





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