震えて待てよ、雑魚どもよ

石田空

故郷はゴブリンにより滅ぼされた

 キシャキシャキシャキシャ


 不愉快な笑い声は、人間ではなにを言っているかがわからない。笑い声だろうと思えるのは、緑色の肌で歯茎を剥き出しにして口角を上げながら出す声だからだ。

 このときにアリアの心のなにかが砕けた。

 彼女の胸に突き刺さったのは、嫌悪と憎悪と復讐心だった。


 村がゴブリンに制圧された。

 町と呼ぶには小さ過ぎ、商人ギルドが通過するには難があり過ぎるアリアの故郷には、当然ながら冒険者ギルドなんて存在する訳もなく、村はなす術なく血の雨が降った。

 武器も持たず、魔法も使えない農民では、ゴブリンにかなうはずがない。

 そもそもゴブリンは俊敏なのだ、農具で戦ったところで、ゴブリンの足を止めないことには、攻撃が当たらない。

 女は巣穴に連れ込まれ、男たちは惨殺された。

 子供も千切っては投げ、千切っては投げと捨てられるため、見知った顔が次から次へと物言わぬ屍になっていくのを、当時のアリアは見ることしかできなかった。

 アリアが助かったのは、ただの運だった。

 千切って投げられる際、彼女は地面に叩き付けられることなく、川に落ちたからだった。もちろん、ただ川に落とされただけだったら、そのまま溺れて死ぬところだったが、幸いにも彼女は太めの木の枝に捕まり、それで流されるだけ流されて、川下で水を汲んでいた冒険者に拾われただけ。その冒険者はアリアの話を聞いて驚き、彼女を神殿に連れて行くと、そのまま去って行ってしまった。

 冒険者も商売だ。依頼のない仕事は引き受けられない。そもそもゴブリンは冒険者ギルドでもたびたび駆除依頼が来るが、国から以外の依頼ではほぼ支払いが期待できないのだ。だから国からの依頼以外のゴブリン駆除の依頼は引き受けないというのがセオリーだった。

 こうして、アリアの村は見放されてしまったのである。

 神殿に入り、大人しく出家して残りの人生を家族の供養に使えたらよかっただろうが。アリアは残念ながら信仰心は村を見放された時点で手放してしまった。それどころか、預けられた神殿から、たびたび村の情報を仕入れるようになったのだ。

 彼女の村はゴブリンに制圧され、次は他の村が襲われるかもしれないと、隣村の報告により、国の騎士団が派遣されて封鎖されてしまった。さすがに国も、ひとつの村だったらいざ知らず、他の村、それも交通の便で絶対に通らないといけない村がゴブリンに制圧されてしまったら困ると判断したらしい。

 しかし、ついぞ村のゴブリン駆除まではしてくれなかった。

 村民は全滅。下手に駆除してゴブリンが逃げた先で増えられても困るという国の判断らしかった。

 それにアリアは怒りを覚えた。


(お父さんもお母さんも死んだ。隣のおばさんも、村長さんも……若い女の人たちは皆さらわれてしまったし……私と同い年の子は皆死んだし……)


 いつしか、アリアは神殿にたびたび宿泊施設代わりに利用する冒険者たちに、「どうやったらゴブリンを殺せるようになりますか?」と聞いて回るようになった。

 本来なら僧侶も止めればいいのだが、彼女の生い立ちを聞いたら誰も止めることはできなかった。冒険者たち視点では、ゴブリンは数が多い上に面倒臭く、ギルド依頼の値段も渋くて、よほど金に困っている冒険者や、まだ駆け出し過ぎて他の依頼を受けられないような新人以外はまず引き受けないが、皆アリアの話を面白がって聞いてくれた。


「まずゴブリンは足が速いから、魔法は必須だな。魔法がないとどうにもならない」

「魔法?」

「魔法だったら神殿でも僧侶さんが教えてくれるだろ。それを磨くんだ」


 神殿では定期的に防御魔法を教える会を開いては、初心者魔法を教えてくれる。

 しかし、それはあくまで商人ギルドや一般人が、有事の際にちょっとでも逃げる時間を稼ぐために教える魔法なため、冒険者ギルドに入れるほどの実用的なものはまず教わらない。

 冒険者いわく「そこで基礎中の基礎だけは学べるから、あとは自分で鍛えていくんだ」と教えてくれた。


「あと、ゴブリンは巣穴を見つけたら、その巣穴に油を流してすぐ火を点けて燃やすんだ」

「巣穴……でも巣穴に女の人が連れ込まれているんだよ? その人たちは……」

「あー……」


 ほとんどの冒険者たちは、口を濁してしまったが、ひとりだけ巣穴について尋ねたら「可哀想だから一緒に殺してあげなさい」と言った人がいた。たまたま神殿にやってきていたどこかの騎士団の女性であった。


「え……女の人たちは?」

「残念ですが、彼女たちはとても怖い想いをし、心身共に壊れてしまっています。生きる気力も失っているのです。もし生きる気力があれば自力で巣を脱出しようとあがきますが、残念ですがゴブリン駆除の任を引き受けて、そんな人にはひとりも出会ったことがありません。生きる気力もなく、巣穴の中にずっといるようではいけません。彼女たちごと焼き払ってあげなさい。それがゴブリン駆除の際のコツです」

「……そうなんだね。ありがとう」


 こうして、アリアはいろんな人から助言を受け、少しずつ、少しずつ冒険者になるための技術を学びはじめた。

 神殿にたびたびやってくる冒険者の剣士から剣の技を習い、防御魔法を教える会で、足止めのための魔法や火炎魔法を学ぶと、それを何度も何度も復唱していった。

 彼女が冒険者ギルドに登録できるようになったのは、彼女が成人し、神殿を離れる頃であった。


「魔法剣士さんねえ……」

「依頼は来てないだろうか?」

「初心者にはたくさんあるよ。皆が皆、金払いのいい大きな仕事に行っちまうから、小さい国からの仕事は値段が渋いから嫌がるんだよ。初心者も数が集まれば充分パーティになるから、初心者を集めて行っておいで」

「ありがとう」


 アリアは髪を短く切り、剣の素振りで太くなった腕で剣を構えた。

 ギルドの依頼内容に目を通したが、たしかに初心者向けの依頼は金払いが悪い上に細々として面倒臭いものが多い。それでも、ゴブリン駆除みたいな仕事は来ていなかった。

 自分のかつての故郷の閉鎖はまだ解除されないんだろうか。彼女はお使いのような依頼をこなしながら、淡々とその機会を待っていた。


****


「アリアさんは今や立派な冒険者ですのに、いつまで経ってもよその金払いのいいギルドに行きませんねえ?」


 その日は、顔見知りだけで依頼を引き受けていた。

 アリアは大きなパーティをつくることなく、常にギルドでパーティをつくってないメンバーと臨時パーティをつくって活動していた。

 それにアリアは困った顔をした。


「ここは私の故郷が近いから。閉鎖が未だに解けないんだ」

「ああ……あそこですか」


 ゴブリンに制圧された村は、基本的にゴブリンにさらわれた女性が死ぬまでは放置していることが多い。ゴブリンは人間の女性がいなかったら個体を増やすことができず、万が一ゴブリンの母体になる女性を殺してしまったら、次の女性を求めて他の村を襲いかねないためだ。人身御供にされてしまった女性には気の毒だが、他の村を守るためにも、定期的にその人身御供は暗黙の了解で行われていた。

 一緒に魔法石採集をしていた魔法使いのリトは、アリアに頭を下げた。


「すみません。余計なことを言ってしまって」

「いや?」

「でもそろそろその村の閉鎖も解けるんじゃないかい?」


 そう口を挟んできたのは、元騎士団員のミリィだった。追放された訳ではなく、単純に団長が王都に引き抜かれてしまったために騎士団が解散してしまったので、仕方なく冒険者ギルドに入ったクチだった。


「そうなのか?」

「王都に行っちまったうちの団長が、近々ゴブリン駆除の依頼を出すかもしれないから、近隣の町村守るのに協力してくれってさ。あの辺りに新しく街道をつくりたいけれど、ゴブリンのせいで工事が難航しているらしいから、いい加減本格的に駆除に入るって」

「……そうか」


 アリアはそう言うので精一杯だった。

 彼女は怒りで満ちている。


(あいつらを……ようやく血祭りに上げられるのか)


 短く切り揃えられた髪は怒りで逆立ちそうになり、目は爛々と輝いている。

 それをリトとミリィは困った顔で眺めていた。

 ゴブリン駆除の依頼が入ったのはその次の日であった。

 ゴブリンは女性を見つけたら、ゴブリンの母体にするためにさらう習性がある。その習性に逆らうため、基本的に男性だけで討伐し、巣に火を放つのが本来のセオリーだが。

 なんと今回の駆除依頼を受けた臨時パーティは、全員女性だったのでギルドマスターは当然ながら頭を抱えた。


「……女ばっかりで行って、救援依頼なんて出せないよ? うちはカツカツなんだから」

「いえ。ギルドマスターには迷惑をかけない」

「でも! せめてひとりでも男を……」

「いえ。あいつらに後悔させてやるから……その脳髄に叩き込んでやる。生まれてきたことを後悔しながら死ぬがいい」


 それは絵本に出てくる魔王の台詞ではとは、さすがに彼女の事情を知っている誰もがつっこむことはできなかった。

 アリアと一緒にパーティを組むことになったリトとミリィは、それぞれ作戦を立てはじめた。


「でもマスターの言うとおり、女だけで行ったら確実にさわられるけど」

「むしろさらわれることを狙っているが」

「……それ、危なくない?」

「……たくさんこの手で殺せるから」


 普段のアリアは、表情筋が死んで、そのせいでクールな顔に見えるが。今のアリアは歯茎を剥き出しに、まるでゴブリンのような笑みを浮かべている。

 もちろんリトもミリィも余計なことは言わなかった。


「でも巣穴に連れ込まれるとしたら、そのまま火を点けて逃げたら、蒸し焼きになるよ? 勝算はあるの?」

「魔法は習った。剣も習った。殺し方もずっと考えて、魔物討伐の際に実践も積んだ。だからゴブリンでも大丈夫だと思う」

「まあ、このパーティが一番やりやすいしね。それで行こうか」


 魔力回復のためのポーションを鞄に詰め、得物を磨き上げて、服はできる限り動きやすい革鎧を付ける。

 こうしてアリアは、数年ぶりに故郷に帰ることになったのである。


****


 アリアの故郷は、本来ならば農村であり、大きな収穫はないものの、丁寧に耕された畑が連なる静かな村だったが。

 数年経って足を踏み入れた先には、茂みが見えた。既に畑は茂みで制圧され、並んでいる家も小屋も、全てツタで埋めつくされてしまっていた。


 キシャキシャキシャキシャキシャ


 そこを蠢くのは、緑色の肌の小鬼……ゴブリンだった。肌を剥き出しにし、小さな者が走り回っている。

 小さな子供らしきゴブリンの頭を掴んだアリアは、その首を躊躇いなく斬り捨てた。それにリトは「挑発し過ぎじゃありませんか?」と咎めるが、アリアは獰猛に笑う。


「むしろ乗ってくれなくちゃ困るよ」


 その言葉は、辺りの温度を下げるには充分だった。

 アリアはゴブリンの子供の頭を投げ捨てると、ゴブリンたちは驚いてこちらを見上げた……ゴブリンの寿命は人間の半分だ。世代交代していたら、人間を見たことないゴブリンだっているから、彼ら視点では巨人と大して変わらないんだろう。大騒ぎで声を荒げはじめた。


 キシャキシャキシャキシャキシャ


「ほら! 挑発したからあいつら怒って!」

「人間見たことない訳ないだろう」

「え……」

「子供がいるってことは、また人間さらってるだろう。こいつらは……可哀想なんて思うな。こいつらははらわたをいくらぶちまけてもまだ足りない」


 アリアは剣を構えている中、「キシャッ」とゴブリンが襲いかかってきた。丁寧に村の畑に置いてある石を掴んで、それを振り下ろしてきたのだ。アリアは少し掠れる。

 慌ててミリィが剣で応戦しようとするが「来るな!」とアリアが止めた。


「この喧嘩を仕掛けたのは私だ。ふたりは関係ない」

「でも! アリアさん!」


 アリアはゴブリンたちに担がれていく。それにアリアは歪んだ笑みを浮かべた。それに気付いたミリィが、リトの腕を取った。


「……逃げよう」

「どうして!? まさか今度はアリアさんを人身御供に!?」

「違うよ、私たちまでアリアに巻き込まれちまう!」

「巻き込むって……」

「小さい頃に親をヤラれて復讐に狩られてる奴ぁロクなのがいないんだ。作戦立てるのに、自分の命なんて算段に入れてないからね」


 それにリトはガタガタ震えた。

 獰猛な笑みを浮かべるアリアのことが頭に浮かんだ。

 彼女は……自爆攻撃をしようとしている。リトとミリィはアリアの無事を祝う暇もなく、必死で逃げるしかなかったのだ。


****


 ゴブリンの巣穴は縦穴式になっている。

 上のほうはゴブリンたちの住処であり、食い散らかされた食材の腐敗臭が鼻を突き刺していった。その下にはゴブリンの子供が走り回っている。大人になったゴブリンは俊敏でちょっとやそっとでは人間が捕まえることができないが、子供はアリアが魔法なしでやったように、簡単に殺せてしまう。

 ここで足の俊敏さを学んで、ようやく地上に出るのだ。

 そして最奥。それがゴブリンが人間たちから駆除対象となる理由の全てがある。

 そこからは、青臭いにおいが充満していた。女性たちが、生きたまま地面に突き刺さっているのだ。その目は落ちくぼみ、肌はくすんで見る影もない。その女性たちの周りには。


 キシャキシャキシャキシャキシャキシャ


 ゴブリンが群がっていた。

 人間の女性を母体にして、ゴブリンは生まれる。母体にされてしまった女性たちは、皆自分が異形の子を産んだことを受け入れられず、心が死に、人間の言葉を数年単位で聞かなかったことから、人の言葉も忘れ、ただ活ける屍となって、死ぬまで活動し続ける。

 それは果たして生きていると言えるのか。そしてこの母体たちは、まだ若かった……アリアたちと、年がほぼ変わらなかったのだ。


「……やっぱり。国が街道つくるためって言って駆除をはじめるなんて言うからおかしいと思ったんだ。ゴブリンの数が増えて、とうとう他の村にまで被害が及んでる」


 アリアは自分の鎧を剥ぎ取って地面に埋めようとしてくるゴブリンを、次から次へと首をはねながら嘯く。

 本来ならば妙齢の彼女たちは、老木のように年輪を重ねた肌になってしまっている……異形を生み続けると栄養は全て生まれるゴブリンのものになり、彼女たちの体の維持には使われない。

 それにアリアは唇を噛んだ。


「……殺してやる。そのために来たんだから」


 アリアは頭からポーション瓶の中身を振りかけると、呪文を唱えた。


炎上フレア


 瞬間、アリアはポーションごと燃えはじめた。

 なんてことはない。彼女のポーション瓶に詰まっていたのは、灯りを点けるための油だっただけだ。

 そして燃えながら、ゴブリンに抱き着いた。途端にゴブリンはアリアを引き剥がそうと抵抗しはじめた。母体であったらなんでもいいはずのゴブリンも、さすがに巣穴に招き入れた女が自分に火を点けるとは思い至らなかったのである。


「一緒に燃えよう。一緒に死のう。私の心は貴様らが私の故郷を蹂躙した瞬間に死んだ。蹂躙される覚悟もなくば、私の村に手を出すな……!!」


 哄笑が広がった。

 ゴブリンたちはその哄笑に恐怖し、逃げ惑った。

 しかし、巣が塞がっているから逃げ出すこともできない。それにアリアはクツクツと笑う


「出られる訳ないだろう。私を入れたのだから。私が土魔法で塞き止めてやったわ」


 蒸し焼き。

 元々縦穴式のゴブリンの巣は、腐敗したゴミが溜まって、一度火種を放り投げたら燃えやすくできている。

 本来、ゴブリンの巣は火種を入れたら外から蓋をし、焼き殺すのがセオリーだが。ゴブリンの巣に自分で出口を封鎖して自爆した例なんて、当然ながらゴブリンたちも語り継いだことはない。語り継ぎたいものは皆死んでいるのだから。

 アリアはくるくると回った。

 もう畑もない。家もない。小屋もない。なにもない。

 せっかく故郷に帰ってきたのに、思い出がなにもないのだ。

 なら、火を点けるしかない。


「死ね」


 壊れた笑みを浮かべながら、燃え尽きるゴブリンたちを哄笑し続けていた。


──アリガトウ


 既に自我が死んでいたと思われた、埋められた女性のひとりから、たしかにそんな声を聞いたような気がした。


****


 数刻経ち、やっとリトとミリィは村に戻ってきた。

 途中で逃げ惑うゴブリンを殺したが、どうにもゴブリンはなにかに脅えているようで、全く反撃してこなかったのが気にかかった。

 既に日が暮れかけている。


「いったい……アリアさんは無事でしょうか。どうしてこんなことに……」

「全く……本当に復讐者にはろくなのがいないよ。まさか……自分から火種を持って巣穴に飛び込んで自爆に巻き込む奴なんか聞いたことがないよ」


 縦穴式の巣は、あちこちに出入り口がある。開いている出入り口からはぐずついたにおいを放っている。大方逃げ惑って逃げきれなかったゴブリンが焼けただれたにおいだろう。元々ゴブリンの巣には腐敗したゴミが溜まりやすく、一度火がついてしまったら、簡単に火が回り、逃げ切る前に皆死ぬ。

 もちろんその中で火をつけたアリアが生きている訳もないと、そう諦めていたが。


「そんなゴブリンのために死ぬ馬鹿がいる訳ないだろ」

「……っ! アリアさん!」


 リトが叫んだ先には、ひょっこりとアリアが立っていた。

 革鎧こそ焦げてしまって使い物にならなくなっているが、本人はピンピンしている。

 それにミリィは呆れた声を上げた。


「……自爆しておいて、よく無事だったね?」

「単純に火種を一番最奥に持って行くには、私自身がさらわれたほうが早かっただけだ。油を被って自分自身を燃やす前にウェントゥスを自分自身にかけて火を防いでただけだ」


 つまりは、自分自身が燃え尽きないよう事前にウェントゥスでコーティングし、それで自分自身を守った上で放火してゴブリンを蒸し殺したということになる。

 呆れて言葉が見つからなかった。


「……でも。ゴブリンを全滅には及ばなかったようですが。巣穴から逃げた数匹ばかりは仕留めましたし」

「巣穴を全部防ぐには骨が折れるから……でも、またやるよ」


 アリアは爛々と歪んだ目をしていた。


「もう人間に危害を加えるのを辞めるまで、何度も何度もあの脳髄に恐怖を叩き込んでやる」


 リトもミリィも余計なことは言わなかった。

 彼女の見た絶望を思えば、彼女のゴブリンを蹂躙する様は、誰かの役に立つのだから。


 小鬼蹂躙者ゴブリンスレンダーの称号を欲しいままにし、ゴブリンに恐怖する村民たちの救世主と呼ばれるような魔法騎士が生まれたのは、このときであった。


<了>

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