第11話

夕飯を食べ、またしばらく時間を潰す。



そして、9時になろうか、という頃、彼は帰宅の準備をする。



「泊まってけばいいのに。パパもママも、喜ぶよ」


「残業以外の門限は10時って決まってるんだ」


「いい大人が門限って、ウケる」


「俺は一途だからな、茉莉亜に心配かけちゃあいけない」


「はいはい、奥さん思いの良い旦那だこと」



恒例になっている別れのあいさつを今日も繰り広げながら、玄関先まで見送る。



「また明日な、カレー、美味かったぞ」


「そりゃどーも」



靴を履き、振り返ってそう言う彼の瞳が、一瞬揺れる。



それに気づかないフリをしながら、


「怒られるんでしょ、早く帰りなさいよ」


と冗談交じりに放つ。



「ああ、おやすみ」


「おやすみなさい、気をつけて」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る