第6話

「おいおい、実の姉の命日忘れるか?」


「命日って言っても月命日じゃない。お義兄ちゃんがマメなのよ。それに三回忌だって過ぎてるんだし」


「あんなに仲良かったのに。冷たいな」



姉、茉莉亜まりあが亡くなったのは、2年前になる。


買い物の帰り道、歩いていたところを居眠り運転の車に突っ込まれたのだ。


かなりスピードが出ていたのか、姉も運転手も助からなかった。



歳が離れていた姉は、その名の通り聖母マリアのように優しく、私の憧れでもあった。


そんな姉の命を突然奪われたやるせない気持ちと怒りは、どこにもぶつけられないまま今も胸にくすぶっている。



それはきっとお義兄ちゃん、もとい新見先生も同じなのか、毎月うちを訪ねてくるのだ。


仏壇は先生の家にあるのだが、この日はうちに飾ってある写真にも手を合わせていく。



「ご飯はどうするの?」


「リリがカレーを作るなら、食べていく」


「カレーしか作れないの知ってるくせに……食べる気満々じゃない」


「よく分かってるじゃないか」


義妹いもうと、何年やってると思ってるのよ」



そんな軽口を叩きつつ、キッチンに向かう。

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