第5話

集中力が切れたのを感じ、美術室の鍵を返して帰路に着く。



バスから降り、ぼうっとしながら歩いていると、家の明かりが付いていることに気づいた。



(あれ?今日、パパとママ、早い日だっけ?)



「ただいま〜」


と声をかけながら靴を脱ぐと、そこにはついさっき別れたはずの人影が。



「リリ、おかえり」



ホワイトボードに目をやりながら、


「あ、そっか、今日月命日だから。お義兄ちゃん来る日だったのね」


と返事をする。



そう、このお義兄ちゃんこそが、私の一目惚れの相手。


私の姉の結婚相手で、美術部の顧問。



新見 慎弥だ。

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