第4話

「はぁ……」



溜息をつきつつも、目の前の絵を眺める。


今描いているのは、涙を流す片翼の天使を、もう一人の片翼の天使が優しく包み込むように抱きしめている構図である。



私が描くのはどちらかといえば人物が多い。



この絵にもモデルはいるが、本人は気づいてないだろう。



完全に一目惚れだった。正確には、彼と、彼の奥さんが醸し出す雰囲気に、目が離せなくなった。



既婚者ということを知っていて一目惚れしたんだから、タチが悪い。



どうしようもないと自分に言い聞かせながら、表には出さないように、本人に悟られないように、今日も筆を乗せる。

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