23

「汗凄いね」


「マジ? シャワー使わせてもらったんだけどな。匂ったらごめん」


「気にしないよ。お疲れ様」



授業を受け、友達と喋って、放課後になった。

昨日までと同じような日々。


だけど。


荷物を纏めて部室へ急ぐ足は早くなっていく。

部室に着いて真っ先に、昨日まで描いていた油絵を大胆に黒で塗り潰した。


鮮やかな空と街は、あの夜に見た空と同じ黒と、禍々しい赤色に染まっていく。


足りない足りない、こんな色じゃない。

もっと深く、もっともっともっと沈んでいくような。


いつの間にか来ていた同じ部員の子が私の姿を引いた所から見ていても、美術顧問の日向先生が戸惑いながら声をかけても、私の手は、勢いは、止まらない。



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