24

気づいてしまった。


分かってしまった。


あの瞬間、音が聞こえたの。


今までの全てを壊してしまう、そんな音。



そう、これが――。





出来上がった油絵は、あの夜の出来事を再現したみたいに。

欲と熱に染まった禍々しい色をした黒空へと変わり、面影はない。


近くの椅子に座り、消費したように力が抜けていく。



「……ははっ」



乾いた笑い声が自然と溢れる。


私、ここまで来ちゃったんだ。

こんな自分、知らなかったなぁ。


私ってもっと綺麗な人間だと思っていたのに。

こんなにも欲に従順で、人間らしかったんだなぁ。


そっと耳に触れる。


これが正しい私なのか、間違った私なのか答えは知らない。

けど今は、前の私よりも視界が変わって見える。


昨日も今日も明日も、同じように過ぎる毎日なのに、不思議だね。

何かが変わっただけで見え方も、感じ方も変わっていく。


私の知らない私にシンカしていく。

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