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あぁ、だめ。

もう欲しくなってる。



「お願いします」



ピアッサーを耳に当てる。


心臓は緊張と未知の痛みに、脈を打つ速度が速くなる。

そんな私に躊躇う事なく、綾部先輩はピアッサーを強く握りしめた。


――カシャン


廊下を歩くと、あちこちの教室から「おはよう」と挨拶の声や、今日の時間割についての愚痴が聞こえてくる。


長い髪の毛だからか耳が腫れている事も、穴が空いている事も、誰も、何も、気づかない。


朝練終わりの池田くんが教室に入ってきた。

私の席にやって来て、「おはようっ」と声を掛ける。

私もいつも通り「おはよう」と笑顔で返す。


あんなことがあったのに、心は空みたいに、澄んでいた。

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