12

どうして名前を知ってるの?

どうして、ここに居るの?


急なことに、頭が回らない。



「ねぇ、なんで連絡くれなかったの? 俺、待ってたんだけど」


「え、あの……」



池田くんとの約束は言えず、黙る。

正直に言ったら、池田くんが不味い立場になるかもしれない。


綾部先輩は「はあ」とため息をつくと、私の腕を掴んだ。



「やっ、」



抵抗は虚しく、強い力で引っ張って行く。

怖い、何が起こるのか分からない。


昇降口から一番近い空き教室に連れて行かれ、ドアを閉められる。

瞬間、唇を塞がれた。


その熱に驚いて、体が固まる。


軽く下唇を噛まれ、熱い肉厚が口内に入って来る。


今まで、誰かと唇を重ねたことなんてない。

ましてやこんな、ねっとりと絡みつくキスなんて、想像もしたことない。



「や、やだっっ」



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