13



反射的に綾部先輩の胸板を押して離れる。


触れられた唇を覆う。

心臓のバクバクする音がうるさい。


何これ。

何これ、なんなの。


胸が、張り裂けそうなくらい、苦しい。



「な、なんで……っ、」



綾部先輩はその細い瞳で、私を狩るように見つめる。

その目、初めて会った時も同じような目をしてた。



「アカネちゃんのこと、気に入っちゃったから」



耐えきれなくなって、教室を飛び出した。


息が、吸えない。

こんなの、こんな感情、知らない。



「なあ、朝さ、綾部先輩と一緒に居た?」


「え……」



放課後、一緒に帰ってる途中でポツリ、池田くんは訪ねた。

あの時の光景が頭の中にフラッシュバックしたせいで、すぐに答えられない。



「友達が綾部先輩に腕掴まれてる所見たって、言ってて……」


「……うん」


「大丈夫だった⁉︎ 何もされてない⁉︎」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る