第35話

瞳も自転車に乗って、噴水の前まで行き、自転車を停めてベンチに座った。今日は、瞳が先に座っていた。

そこへ、桂が走ってきた。

「おかえり」

瞳が桂に言った。

「ただいま」

二人は、いつのまにか先に来ていた方が「おかえり」後から来た方が「ただいま」と言うようになっていた。

桂は、瞳を自転車の後ろに乗せて、ペダルを踏み込んだ。

「ねえ、かっちゃんの知り合いで、独身で彼女がいない人っている?」

「何で?」

「図書館の女の子が、誰か紹介してって言うのよ」

「職場になら、俺と同期の奴がいるけど、彼女何歳?」

「大学出たばかりで、二十三歳」

「若いな。無理におじさんと付き合わなくても若いのいるだろうに」

「かっちゃんて、もう、自分のことおじさんだと思っているの?」

「二十三歳の子から見たらおじさんだろう?」

「じゃあ、私はかっちゃんから見たら、おばさんだね」

瞳はふふっと力なく笑った。

「そんな事思ってないよ。でも、俺はおばさんの瞳も、おばあさんになった瞳も、ずっと好きだよ。約束する」

「ありがとっ」

「三沢孝太って言って、同期で気の合ういい奴なんだ。おじさんでも良かったら、紹介するけど」

「訊いておくわ」

「良かったら4

人でご飯食べないか?瞳にも孝太、紹介したいし。でも、大会終わったらな」

「うん」

二人は、桂の家の店で夕飯を食べ、その後、いつものように桂は走って、瞳は自転車で、瞳のマンションまで一緒に帰った。桂はマンションの前まで瞳を送ると、また走り出した。

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