第30話

瞳が家に帰って軽く昼食を食べ終わると、インターホンが鳴った。

「はーい」

瞳が出ると、祐介の顔がインターホンの画面に写った。

「祐介?どうしてここがわかったの?」

瞳は驚いて、目を丸くした。

「美樹から聞いた。大阪に帰る前にどうしても瞳に会いたかったから来た」

・・と言うか、美樹が寝ている間にバッグを探って、住所録を盗み見たというのが正解だが。

「私、今から出かける用事があるんだけど」

「もしかして、西村とか?」

「うん、まあ」

「迎えに来るのか?」

「ええ」

「なんか、またタイミング外したな。俺は諦めないからな。でも、今日は帰るよ」

祐介ばそう言うと、入り口に向かった。祐介が自動ドアから出ようとした時、すれ違いに入って来た男がいた。

「西村桂だ」

祐介は気がついて、一度外に出たが、二人が出てくるのをマンションの陰に隠れて見ていた。

すぐに 二人は、仲良く手を繋いでエレベーターから降りて来た。自動ドアから出ると、入り口に停めてあった白い乗用車に乗り込み、大通りへと消えていった。

「瞳・・」

祐介の握った拳がプルプルと震えていた。

祐介もタクシーに乗り込み、桂の車の後を追った。

映画館に入った桂と瞳は、ポップコーンとジュースを買い、一番後ろの右寄りの席に並んで座った。祐介も、二人に気づかれないように、前の方の左側に座った。

映画が終わった後も、二人は暫く座ったまま余韻に浸っていた。

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