第28話

翌朝、祐介はシャワーの音で目を覚ました。

「おはよう」

ガウンをまとった美樹が、バスルームから出てきて、祐介に声をかけた。

美樹は、冷蔵庫からミネラルウォーターを一本出して一口飲むと、残りを祐介に渡した。

祐介は、ペットボトルを受け取り、豪快にゴクゴク飲んだ。

「昨夜、やっぱり瞳と一緒だったでしょ?隠してもダメよ。祐介のスーツ、瞳の香水の香りがしたもの」

祐介はドキッとした。

「瞳のこと、抱いたの?」

美樹は、攻めに入った。

「んー。抱いてはいない。抱きしめただけ」

祐介は、開き直った。

「何それ。やっぱりここにきたのね」

「・・俺、高校まで瞳が側にいることが当たり前過ぎて、好きだってことに気がつかなかったんだ。瞳が側にいなくなってからずっと、いつも瞳の事ばかり考えていた。美樹と付き合ってても、美樹を抱いてても、昨日もずっと瞳のことを思っていた。だから思い切って昨日、瞳に告白した」

「告白って。じゃあ、私は祐介の何なのよ。瞳だって、彼がいるって言っていたじゃない」

美樹の声は、怒りに震えていた。

「俺たち、付き合ってるわけじゃないだろう?お前だって、俺とは本気じゃないだろう?」

祐介は、迷惑そうに言った。

「本気よ。私は祐介が好き。結婚したいと思ってる。祐介は、私とは遊びってこと?」

「悪い。でも俺、お前とは結婚とか考えられないから。それに、俺から誘ったわけじゃないだろう?」

「ひどい。私とはこれっきりってこと?」

美樹の目が、涙で潤んでいた。

「遊びでもいい。瞳の代わりでもいい。私は祐介が好き」

美樹は、祐介の顔を両手で引き寄せ、激しくキスをした。

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