第25話
瞳は、エレベーターに一人で乗りながら、祐介に抱きしめられてドキドキしている自分を必死に抑えていた。
祐介もまた、自分の腕の中にすっぽりと収まった瞳の温もりを忘れられずに、窓の外のネオンを見下ろしていた。
その時、祐介の携帯に美樹から電話がかかってきた。
「もしもし」
「私、美樹。幹事どこへ行っちゃったのよ。二次会お開きにするわよ」
美樹の声は、どう考えても怒っていた。
「悪い、悪い。飲み過ぎたから、ホテルの部屋で休んでた」
祐介は、色々訊かれるのが面倒くさくて、適当に答えた。
「もしかして、瞳と一緒?」
美樹が疑って訊いた。
「まさか、そんなことある訳ないだろう?」
祐介は平静を装って言った。
「そう?瞳もトイレに行くって言って席を立ったきり、帰ってこないから、一緒に出たのかと思った。良かった」
美樹は、ホッとして胸を撫で下ろした。
「何が良かったんだ?」
「だって、瞳は、高校の時祐介のこと好きだったじゃない?だから、祐介が瞳に誘惑されちゃうんじゃないかと思って、心配してたのよ」
祐介は、ドキッとした。
「そんなことないよ。入り口で一緒になって、瞳も帰るって言ったから、タクシー拾って返しただけ」
「そう」
「俺と瞳の分、二人分払っておいたからな。あと頼むわ」
「いいわよ。その代わり、そっち行ってもいい?」
「ああ・・」
「すぐ行く」
美樹は電話を切ると、ご機嫌で会費を集めて会計を済ませ、さっさと二次会をお開きにした。その後は、三次会に行くグループ、タクシーを止めて帰る人と、それぞれに散って行った。美樹は、祐介の泊まっているホテルに着き、エレベーターで10階に向かった。
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