第24話
「瞳、ごめん・・。俺、もっと早く瞳の気持ちに気付いていれば良かった」
「祐介・・」
「俺、今日は、瞳に告白するつもりで来たんだ。でも、俺って、なんかいつもタイミング悪いんだよな」
祐介は抱きしめていた腕を緩めて瞳の顔を見ながら言った。
「祐介・・」
「今度の彼は、どんな奴なんだ?」
「建設会社に勤めていて、マラソンの選手もやってる人」
「早いのか?」
「知り合ったばかりだから、良くわからないけど、優勝するって言ってたわ」
「もしかして、北川建設の西村桂か?」
「そうだけど、知ってるの?」
「ああ、次の大会で優勝すれば、二年後のオリンピックに行けるはずだぜ」
「そうなんだ。マラソンて全然見ないから、良く知らなかったんだけど、そんなに凄い選手だったのね」
瞳は、改めて桂の事に興味を持った。
「俺だって、この業界ではそこそこ稼いでいる弁護士だよ。西村よりずっと俺の方が瞳の事幸せにできると思うけどな」
「祐介、弁護士になったの?」
「まあね、一応これでも法学部行ったから。今は弁護士事務所に入っているけど、来年には東京に帰ってきて個人事務所を開く予定なんだ」
「凄い。みんな頑張っているのね」
「今回も、そのための部屋探しに来たんだ。明日は一日、不動産巡りして夜帰る予定で、順平も手伝ってくれるって言うし」
「そう」
瞳は、祐介の腕をすり抜けてソファに座った。
祐介も瞳の横に座った。
「瞳、事務所開いたら一緒に暮らさないか?」
「祐介・・」
「俺、やっぱり瞳が好きだ」
祐介が真剣な顔で言った。
「ごめんなさい」
瞳が頭を下げて言った。
「そんなに西村が好きなのか?」
「あと一日早かったら、祐介のプロポーズ受けていたかもしれない」
瞳も真剣に言った。
「やっぱ、タイミングか?」
祐介は、自分に言い聞かせるように言った。
「わかった。今日のところは引き下がるよ。でも俺は、諦めが悪いんだ」
「ふふっ、知ってる」
瞳は、祐介のことは全てお見通しと言うように笑って言った。
「じゃ、私、帰るわね」
「ああ」
「おやすみなさい」
そう言うと、瞳は部屋を出て行った。
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