第23話
「高校の時、いつも瞳が俺の側にいてくれたってことに、卒業する頃になって気づいたんだ。瞳が急に俺から離れていっただろう?胸の中に風が吹いたって言うか、急に寂しくなった。小学校の頃から瞳が側にいることが当たり前で瞳に甘えていたんだと思う。でも、瞳はそんな俺に愛想を尽かして離れていったんだよな。あの時は、瞳に好きだって言えないまま卒業になっちまった。今だから言うけど、俺、あの時からずっと瞳が好きなんだ」
「祐介、ありがとう。私も小学校の頃からずっと祐介が好きだった。でも、祐介はいつも彼女がいたし、私は見ているしかなかった。でも、そんな私のことずっと見ていてくれた人がいたの。・・・高宮省吾くん」
「あの双子の・・・。確か一年の時、同じクラスだったな」
祐介は、記憶をたどりながら、省吾の顔を思い浮かべていた。
「そう。彼が、高校の卒業式の日、私に告白してくれたの。一年の時からずっと好きだったって。でも、私が祐介を好きだってわかっていたから、自分は告白できなかったって。でも、私の行動を見ていたら、祐介を諦めたみたいだったから、思い切って告白したって」
瞳も、あの頃を思い出しながら話した。
「あいつ・・・」
祐介は、ムッとしたが、何とか必死に感情を抑えていた。
「その時すぐには返事はできなかった。ありがとう、とだけ言って別れたわ。どこの大学を受けたかも知らなかったし。そのまま春になってびっくりした。大学は違ったんだけど、電車の降りる駅が一緒だったの。それで、良く電車で一緒になって、同じ車両に乗るようになって、休みの日には、二人で出かけるようになった。四年生の時には、彼は自分で会社を作ると言い出して、借金をして会社を作った」
祐介は、瞳の話を興味深く聞いていた。
「最初は借金を返すので精一杯で、朝も昼も夜も関係なく働いていたわ。私も公務員試験に合格して、図書館に勤めるようになった。お互いに忙しくなって、あまり会えなかったけど、借金がなくなったら結婚しようって言ってくれていたから、その言葉を信じて待っていた。そして三年前、借金を返したって連絡がきて、私達は結婚したの。結婚生活は毎日が楽しくて、喧嘩した事なんて一度もなかった。毎日一緒にいられるだけで幸せだった。それが一年前、弟の圭吾くんと二人で釣りに行って、高波に飲まれて死んでしまったの」
瞳の目から、涙が溢れて落ちた。
祐介は、思わず瞳を抱きしめた。
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