第21話
「どうしたの?祐介?」
瞳は祐介の態度に戸惑っていた。
「ごめん」
祐介は我に返って立ち止まり、瞳に謝った。
祐介は瞳の手を離して、歩き出した。瞳も祐介の少し後ろをついて行った。角を曲がるとすぐに高級ホテルが見えた。祐介はホテルの入り口の回転扉に向かい、瞳の姿を確認するように振り向いて止まった。
「俺、今日ここに泊まるんだ。部屋で話さないか?」
瞳は、静かに頷いた。
「ふふっ」
瞳は思わ笑った。
「何だよ」
「祐介って、学生の時から変わらないね」
瞳が懐かしそうに言った。
「何が?」
「いつも、私を置いて先に行ってしまうところとか、気に入らない事があるとすぐムッとするところとか」
「そうか?」
「そうよ。何年同じクラスにいたと思ってるの?十二年よ」
「そうだな」
祐介は、ホテルにチェックインすると、カードキーを受け取り、瞳の手を握ってエレベーターに向かった。十階に着き、二人は部屋に入ってソファーに座った。間もなく、部屋のチャイムが鳴って、ルームサービスのシャンパンが届いた。チェックインの時に祐介が頼んでおいたのだ。祐介が立ち上がって、戸を開けた。
「飲むだろ?」
祐介が、グラスにシャンパンを注いで瞳に渡した。
「ありがとう」
瞳は窓際に行き、眼下に光るネオンを見ながら言った。祐介もシャンパンを手に、瞳の横に並んで立った。
「乾杯」
祐介は、自分のグラスを瞳のグラスに合わせると、一気にグラスを傾けて、シャンパンを飲み干した。
「どうしたの?何怒ってるの?」
「瞳、結婚したんだ」
アルコールの力を借りて、祐介が重い口を開いた。
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