第20話

瞳は、店に入る前に桂に電話をかけた。桂はワンコールで電話に出た。

「もしもし」

「私。遅くなってごめんなさい」

「いや、今日は何かあったの?」

「高校の同級会なんです」

「そっかあ」

「明日の話ですよね?」

「うん、大原さん、観たい映画ある?」

「そうですねえ・・・」

そこへ、瞳が来ないので、心配した祐介が瞳を捜しに来た。

「瞳、早く来いよ」

電話の向こうから、瞳を呼び捨てにする男の声が聞こえてきて、桂は胸騒ぎがした。

「今行く」

瞳は祐介に返事をした。

「ごめんなさい。西村さんに任せます」

「わかった。朝9時に、車で迎えに行くよ」

「ありがとうございます。じゃあ、明日」

瞳は、急いで電話を切ると、二次会の店に入って行った。

「ねえ、瞳は結婚してるの?」

隣に座った上野美樹が訊いた。

「結婚したけど、一年前に主人が事故で亡くなって、今は一人よ」

「未亡人かあ」

瞳の 前に座った杉浦順平が思わず口走った。

その言葉に男達が反応し、視線が一気に瞳に集まった。

「なら、俺、彼氏に立候補しようかな」

順平が手を挙げた。

「順平じゃ無理よ」

美樹が笑いながら言った。

「そ、そんなことないわよ」

瞳が順平を庇うように言った。

「順平でいいのね」

美樹が瞳に迫った。

「順平、・・ごめんなさい」

瞳は、順平に頭を下げた。その瞬間、大爆笑を誘った。

瞳は中学の時、美人で成績も良く、男子生徒の憧れのマドンナだった。

「今、彼氏・・・いる・・から」

瞳は素直に言った。

「何だ、残念」

男達の、残念そうな溜息が聞こえた。

それを聞いて、祐介が徐に席を立った。瞳は、カクテルを早いピッチで飲み干した。

「ちょっとトイレ」

瞳は美樹に声をかけると、トイレの先の入り口に向かった。そこには、先に来ていた祐介がムッとした顔で立っていた。

「二人分払っておいたから」

祐介はそう言うと、瞳の手を引っ張って外に連れ出した。

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