第4話

手際良く本を、本棚に返していく瞳の横に並んで、桂は、

「忙しそうだね。もう昼飯食べちゃった?」

と、声をかけた。

「まだですけど、休憩が取れるかどうか」

瞳は、本棚に目を向けたまま言った。

「今日は、人気のサークルの読み聞かせだったので、いつもの土曜日の三倍の親子が来ていて、パートさん達にも今休憩に行って貰ったところなんです。向かいの食堂が2時までしかやってないんですが、今日は混んでいるみたいで、間に合わなかったらお預けです」

瞳はふふっと笑って、桂から本の塊を受け取りながら言った。

桂が腕時計を見ると、1時になろうという所だった。

「それは大変だ」

桂は仕事の邪魔にならないように、先程座っていた長椅子に座って、新聞を広げながら瞳の姿を目で追っていた。

瞳は持っていた本を全て本棚に返し終わり、カウンターに戻ると、また本を抱えた。それを何回か繰り返して、その間にカウンターで本の貸し出しと返却に追われていた。

時々、「こういう題名の本はないか」と尋ねる人もいて、瞳は忙しそうに対応していた。

「好きかも」

忙しい中でも、絶えず笑顔で接する瞳の姿に、桂は笑みを浮かべながら呟いた。

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