第3話

「出直してくるよ」

桂は店主に声をかけると、店の外へ出た。

「仕方ないな。図書館でも行って時間潰すか」

桂は車が来ないのを確かめると、道路を渡って向かいの図書館目指して走った。

今日は土曜日の午後。毎週恒例の子供向けの読み聞かせの時間でもあり、親子連れで図書館が最高に混む時間でもある。

桂は図書館に入り、とりあえず新聞でも読もうかと新聞コーナーに向かった。

桂はラックから今日の新聞を一つ選んで手に取ると、館内がよく見渡せる窓際の長椅子に座って、一面から目を通した。

司書の瞳は、忙しそうに何度もカウンターと本棚を往復しながら返却の本を棚に返していた。前が見えないほどの本を積み重ねて抱えた瞳が、新聞コーナーの横を通り過ぎた。桂は、徐に立ち上がって新聞をラックに戻すと、瞳に近づいて行った。

「重そうだね。半分持つよ」

と、瞳の持っていた本の上半分を持った。

「えっ?」

驚いて声を上げた瞳に、

「いいから、いいから」

と、桂は軽いノリで返した。

「すみません」

瞳は、思いもよらない事に恐縮した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る