路地陽平

「…………ぞ」




「早く」




「早く立たないと死ぬぞ」




立つ?ぼやけた思考。

水も飲んでしまった。

このまま、俺は死ぬんだ。




「しょうがないっすね」

誰かが側に寄ってくる。体躯のいい身体に持ち上げられる。

「ゲホッゴホッ」

飲んだ水を吐き出させられる。

「俺は、殺されるんじゃ」

まだ思考の追いつかない頭で何とか喋る。


「何、言ってる。ここはホテルのプールだ」

聞き覚えのある声。

「プール…」

「授業を受けずドラックに酒。15歳の高校生が良いご身分だな」

やっと路地陽平は思考が鮮明になり、声のする方を見た。

国語の先生が立っていた。

「鮮血学園のルールを忘れたか?」


ルール。高校生らしく楽しんむ。


「金持ちな両親と、優秀な兄達に感謝しろ」

俺が家族に感謝だと。

怒りがこみ上げてくる。

「学校に通い授業を受けること。自宅に帰ること。分かってると思うが玉利朝日を信用しないこと。まずはそこからだな」


「煩い!お前らに俺の何が分かる」


立ち上がり国語の先生に殴りかかろうとする手を、痕が残りそうなほど強く握られる。


「おいおい。助けてやった恩人にその態度はなんだ。Rやっぱり殺していいか」

「あらー。Eちゃんメッ」

Eと呼ばれた手を、ゆっくりと外した。

「私達は生徒を指導、導くのが仕事でしょー。ね、Rちゃん」


「そうだな…。お前のことは全て知ってるが理解する気は無い」

感情の無い表情でRと呼ばれた国語の先生が言う。そして、路地陽平の顔の前にタブレットを見せる。

父の姿が映し出された。



「特別に許可を得たので伝えてやる。私も兄達も鮮血学園の卒業生だ。お前も卒業してくれることを願う。卒業出来なければ、お前と離縁する」

久しぶりに見た父の顔や声は、相変わらず厳しかった。


いや…


路地陽平がそう思いこんでるだけかもしれないが。


「だそうだ。坊ちゃん。お前が借りてるホテルは、明日以降から使えない。自宅に帰るこったな」

「Rちゃん。もう身体は大丈夫よー」

Eの手を外した時に、さり気なくRは脈を計っていた。

「なら帰るぞ」


「待てよ!説明しろ」

路地陽平が叫ぶ。

「質問は18時〜19時電話かメール。先着2名だ」

無表情に感情の無い声でRは言い、3人は立ち去った。



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