始まる

学校の外に出ても、耳鳴りは和らぎはしたが、消えはしなかった。

耳鳴りが消えたのは、自宅に入った時だった。


何だったんだ?

昇は、ただいまも言わずに、2階にある自分の部屋へと玄関から直行した。

部屋に入るなり、ズルズルとお尻から床に座り込む。

そして、自分の携帯、支給された携帯、タブレットの画面が、つくことを確認した。


ただ、タブレットの画面は点灯するが、先程のクラス座席表のアイコンがない。

壊れたのかと思い、音声検索アイコンをタッチし、聞いてみた。

「クラス座席表」

「今は使えません」

と、タブレットのスピーカーから返ってくる。

続けて昇は、聞いてみた。

「いつ使える?」

使える時間、場所が限定するのかと思ったからだ。

「今は使えません」

また、同じ回答しか得られなかった。


そんな事をしていると、1階から呼ばれる。

「夕飯よー」

昇は、タブレットに興味を無くしたように、ベットに放り投げると1階へと向かった。


夕飯を食べながら、入学式はどうだったかだのと、平凡な会話が始まる。

そんな会話には興味が無かったので、夕飯を急いで食べ終わると、また自分の部屋に戻り、趣味のFPSゲームを始めた。


夢中になって遊んでいると、突然に声がする。

「21時です。寝る準備を初めて下さい」

びっくりして、昇は声のする方向を見た。

ベットの上のタブレットから出ている音だった。

「アラーム?」

設定した覚えは無いが、昇がタブレットに触れると音も言葉の表示も消えた。

気にはなったが、仲間が待っているし、FPSゲームが面白くなっていた。

昇は、またタブレットをベットに置き、遊びに戻った。


「23時です。寝て下さい」

また、昇はびっくりするが、今度はすぐにタブレットを持った。

「アラームじゃない…」

今回も気にはなったが、FPSゲームは待ってくれない。

音と表示が消えるのを確認して、タブレットをベットの傍の床に置いた。


けっきょく昇が寝たのは、日付が変わって少ししてからだった。

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