第43話 呪いの解き方
「アルフレッド様も何考えてるのかしら。
顔は合わせる様になったけど、ぼんやりしてて私の話聞き流してる気がするの」
「まさか他の女の事考えてる……としたら許せないわね。更なる恋の駆け引きが必要なのかも。私が色々作戦考えてあげましょうか?」
「いや、ミラの考える作戦とかなんか怖いから遠慮する」
「えー?」
「スカーレット、ちょっと良いか?」
「ん?リートスどうしたの?」
中庭のベンチに座り、ミラと婚約者の悪ぐ……ちょっとした相談で盛り上がっていると、リートスがやって来た。
「呪いについてだ。掴めたかも知れない。
古代語の本を漁ってて見つけた……読み解ける自分がいて良かったな」
「え!?本当に!?」
レッティはそう言いつつ、周囲に聞いている人がいないかキョロキョロと見回す。
よし……大丈夫そうかな。
「どうすれば解けるの?」
「……方法が分かっても、それでアッサリ解ける訳じゃないぞ。
……スカーレット、お前は強い聖属性持ちだな?」
「え?うん、そうだけど」
「お前が解きたがっている呪いと言うのは……アルガー公爵が討ち取った北の薔薇の魔女によるもので、お前の婚約者が呪われているって事で良いんだよな?」
「え!?なんで分かるの?」
そこまでは説明していない筈!
「呪いと同時に薔薇の魔女について調べているんだから、そう考えるのが普通だろ。
別に言いふらすつもりは無い。公爵家を敵に回すのは怖いからな。
ワイズもそうだろ?」
「そうね。私も予測は付いてたわ。私の事は信じて良いわよ、レッティ」
ミラもウインクしてみせた。
二人にはバレてたんだ……。
「うん……実はそうなの。このままだとアルフレッド様は長生き出来ないの」
「なるほどな……だから、ああ言う態度を取ってるのか……ムカつくな………………。
で……だ。薔薇の魔女は恐らく、死の直前に自分自身のコアを触媒にして呪いを放った。
かなり強力な呪いだ。
ならば、解呪したいのなら、それ以上に強力なコアを触媒にすれば良い」
「それ以上…………例えば神獣のコアとかは?」
スコルやフェンリーには悪いが、もしレッティの胎内のコアが使えるのなら使いたい。
だが、リートスは首を横に振った。
「神獣か……ダメだと思う。
薔薇の魔女は相当強力な魔族だったんだ。
だから…………魔王のコアを使うのが良いんじゃ無いかと思うんだ」
「魔王の!?」
信じられない言葉だった。
持っているだけで精神を蝕む様な恐ろしいシロモノだ。
……確かに魔王のコアなら、他の何よりも強力な触媒になるだろうけど。
「スカーレット、強力な聖属性を持つお前ならば魔王のコアの影響を受けず……小さなコアのカケラを少しずつ集めながら一つずつ浄化する事が出来る筈だ。
浄化したカケラを集めて、合わせれば、薔薇の魔女の呪いに打ち勝てる物を作り出せるはずなんだ」
「本当にレッティなら平気なんでしょうね?
魔王のコアなんて……それでやっぱりダメでしたじゃ許されないのよ!
リートス、なんでレッティを危険に晒す提案なんてするのよ!?」
ミラは反対する。レッティの事を想ってくれる親友の気持ちが嬉しい。
「……自分としてもスカーレットに危険な事をして欲しい訳じゃない。
ただ……コイツならきっとやり遂げられると信じているだけだ。それに自分もいる」
リートスの信頼の言葉にレッティはにっこり笑った。
「ミラ、大丈夫。私もリートスの事信じているし、私はアルフレッド様をどうしても助けたいの」
「レッティ……無理はしないで。ダメと思ったら引き返すの。それだけ約束して」
「うん。心配してくれてありがとうね、ミラ」
レッティは親友と抱きしめ合う。
「……話は纏まったな。魔王のコアについても調べておいてやるから、ワイズは今後も図書館の出入りの許可頼むぞ。
じゃあ、自分はこれで……またな」
「待って……どうしてリートスは私の為にそこまでしてくれるの?
アルフレッド様の事嫌ってそうなのに」
レッティはリートスを引き留めた。
「あー……お前とは友達だと思ってたんだけど?
困ってる友達を助けるのは当然とかじゃなかったか?確か」
リートスは振り向かずに、紫の頭を掻きながらそう言った。
「ありがとう……リートスは友達……親友だよ!」
「あっそ。じゃあ、自分は忙しいから今日はこれで。またな、親友」
リートスは片手を軽く上げて去っていった。
その耳の先端が少し赤くなっている事に気がついてレッティはミラと顔を見合わせて笑った。
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