第41話 大会の始まり
そして、チーム戦の当日がやって来た。
「優勝目指すぞ」
普段同様にその声はテンション低いのに、リートスの目指すところは高い。
「打倒!アルフレッド様!ね?」
ミラも何故かレッティの婚約者を倒すのにやる気満々の様だ。
かの黒髪の騎士様はチーム戦なのに単独での参加らしい。
一人での出場もルール上問題は無いがチーム戦とは……と言葉の定義や大会の意義考えさせられる。
確か協力して〜協調性が〜みたいな名分で開かれてる筈だったのだが。
優勝候補のアルフレッドと一緒に組みたい人も山程いたみたいだけど、足手纏いになるからと全てお断りしているそうな。
何でも出場してそれなりの成績を上げれば、魔法学などの単位が貰えて、出席日数を更に減らせるという利点目的での出場らしい。
「そう言えばリートスは何でチーム戦出ようと思ったの?」
学校行事なんて興味なさそうな顔してるのに。
「ああ……学年首位のスカーレットの実力の程が知りたくてな」
「やっだぁ!リートスったらレッティ狙いだったのね!レッティどうするの?」
「いや、狙いって……どうもこうも無いよ。実力なんて無いよ」
そんなこんなで始まった大会。
学外の人も事前に許可されれば観客席に来れるなで、なんと、レッティの為にハナが駆け付けてくれている。
「ハナ!来てくれたのね!」
「お嬢様!若奥様も本当は楽しみにしていたのですが、体調をまた崩されて……」
「ええ!?平気なの?」
「お医者様が何日か養生されれば平気だと……」
お義母様も身体が弱くて大変だ。
息子とレッティの活躍を見たかったろうに。
「ハナが若奥様の分まで応援しますね」
「嬉しい!頑張るね!」
レッティはハナに手を振る。
「……いつもより振る舞いが子供っぽくないか?」
「リートスがこんな時だけ目敏い!……小さい頃から姉みたいに思ってる人なの。大事な家族よ」
「ふーん……」
ミラも両親に手を振ってる。リートスは家族は来ていない様だ。
「アルフレッド様の一回戦ね。見ないと!」
「敵の視察だな」
「違うから!今だけ敵だけど……応援するの!」
リートスの言葉をレッティは即時に否定する。
アルフレッドの家族が来ていない分は、レッティが応援せねば。
応援無しでもどうせ勝ち進むんだろうけど。
学園の敷地内にある闘技場は、元々魔法での戦闘訓練に使われていた場所のようで、古い魔法の力のお陰で魔法薬でその場で治らないような一定以上の怪我はしないようになっている。
とは言え……
「強いな……」
「アルフレッド様……容赦無い」
リートスの言葉にレッティも頷く。
第一回戦から炎の壁で相手を幻惑しつつ、怯んだ所を一気に攻め立ててあっという間に勝ってしまった。
相手は怪我と火傷で痛そうだ。
闘技場の魔法も戦闘の痛みや苦しみは減じてはくれない。
治療の為に素早く白い制服の集団が取り囲んでいる。
アルフレッドが振り向く。
目が合った。
そのアルフレッドの黒い瞳が横にスライドし、怒りに燃える。
横を見るとリートスが舌を出しつつ、ジェスチャーでアルフレッドを挑発していた。
「何してるのよ」
「良いんだよ。戦いなんだから、勝つ為には何でもすべきだ。
これで少しでも平常心を失えば良い」
馬鹿みたいなリートスの戦術にレッティは吹き出した。
アルフレッドを見るといつの間にか、こちらに背を向けていた。
「よし!私達も第一試合頑張ろうね」
「ああ……ここで負けるのは格好が付かない」
両親のそばに居たミラも合流して、控えに向かった。
♢♢♢♢♢
スカーレット達は危ういところ無く勝ち進んでいた。
スカーレットが風の魔法の使い手なのは初めて知った……そう言えば、どんな系統の魔法が使えるのか聞いた事も無かった。
風の魔法と言えば、ミスティカも使っていたな、と思い出す……風の中棚びく長い銀髪も。
あの生意気なリートスという奴か、同じチームの女学生が土系統の魔法が使えるらしく、石の礫が相手を的確に反撃を許さず仕留めて行っていた。
アルフレッドは苛立っている。
リートスが目が合っては挑発する様な事をするからだ。
やはりスカーレットには相応しく無い。
スカーレットがその隣で警戒心無く笑っていたのもアルフレッドには面白くなかった。
アルフレッドはあの生意気な下級生の鼻っ柱をへし折ってやるつもりだ。
あちらが魔法の天才でも、こと戦闘ならアルフレッドの方がずっと経験があるのだ。
この大会の為に組んでいるなら、立場を……実力を思い知らせてやれば、今後はスカーレットには近付かないだろう。
その後アルフレッドもスカーレット達も順調に勝ち進み、そして決勝で戦うことになった。
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