第37話 どすこい!アナスタシア現る!
渡り廊下をレッティ、ミラ、リートスの三人で歩いていると、向こうから立派な体型のアナスタシアがズンズンドスドスタップンタップン歩いて来た。
最近更に立派になられている……。
傍に避けると、アナスタシアは目をカッと開いて目敏くレッティを見つけて来た。
――げげっ!怖っ!
「あら!?棒切れの様に貧相過ぎて見落とすところだったじゃない!
ご機嫌よう!!スカーレット!!メガネなんて掛けて本当に貴女は地味で…………あら?あらあらあらぁ!?そちらの殿方はいったいどちら様かしらー!?」
アナスタシアのゴージャスダイナマイトボディに占める肺の割合はどんなモノだろうか。
とんでもない大音量で発せられた後半の台詞は、魔法の力無しとは信じられない程に良く響いた。
お陰様で離れたところから何事かと野次馬が集まって来る。
アナスタシアは衆目が集まったのをコレ幸いと腕を組んで……胸元をガッツリ寄せ上げてご機嫌な笑顔を浮かべている。
ご自慢の金髪縦ロールもビヨンビョンと機嫌よく伸縮している。周囲の視線を一心に集めてご満悦の様子だ。
「……………………なんだこいつ」
リートスが困惑している。
人付き合いを普段しないリートスは、こんな目立つ有名人を知らないのだろうか。
集まった野次馬の中には、またアナスタシアかと納得した顔をして早々に去って行く人もいると言うのに。
「アルフレッド様という類稀なる文武に優れた素晴らしい方がいるのに、他の殿方を侍らせて二人っきりで何処へ行くつもりなの〜!?」
アナスタシアが喋る度に、風も無いのにビヨンビョンと跳ねる面妖な縦ロール……もしやそういう魔法が掛かっている?
「私のことは見えてないのかしら?レッティ、貴女は私の事見えるのよね?」
ミラが自分の手が透けていないか見る様に、手を掲げて目を眇めている。
「見えてる見えてる。あなたはまだ幽霊にはなってないから安心して、ミラ」
レッティとミラでヒソヒソとやり取りをしていると、無視されたと思ったらしいアナスタシアがムスーっとした顔をした後、ニヤリと笑ってビシッとレッティに指を突きつける。
「この事はアルフレッド様に言うから!!ザマァ無いわね鶏ガラ地味女ァ!!おーほっほっほ!!」
アナスタシアはズンズンドスドスタップンタップンビヨンビヨン去って行った。
「…………新種の魔物か?」
リートスは初めて見る奇怪なアナスタシアに、精神的なショックを受けているようだった。
……あら?意外と繊細?
「あれも貴族の令嬢よ」
レッティが真面目な顔で教えてあげると、リートスも神妙な顔で答える。
「そうか……自分はああいうタイプの…………生命は初めて見た」
集まった野次馬もアナスタシアがいなくなった後はレッティ達に興味を失ったらしく、多くは直ぐに去って行った。
……何人かはレッティを指差していたのが不愉快だが、淑女のスカーレット様がとっ捕まえて文句を付ける訳にもいかない。
「早く行きましょう……えーっと何処に行くんでしたっけ?」
レッティが小首を傾げると、リートスが、ああ……と何で三人で居るのかようやく思い出したという顔をした。
「ロイドの相談事だったな。それで相談内容は?」
「それも聞かずに何処行くつもりだったのよ」
ミラが呆れた顔でリートスを見るが、リートスはそんなミラを無視する。
リートスはそんなだから周りから浮いちゃってるのにぃ……。
「呪いについて。解呪の方法を知りたいの。
あと……北の薔薇の魔女について」
悪しき北の薔薇の魔女――それがアルフレッドの祖父、ジェイムズ・アルガー公爵がその首を若き日に打ち取った対象……そしてアルガー公爵家に呪いを掛けた相手だった。
「…………図書館に行こう」
リートスが踵を返して、国の中でも随一の蔵書量を誇る学園の図書館へと先導した。
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