第4話 -1.5
私の回りは静かな宇宙そら、私の気持ちと正反対な静けさ。ただ、この狭いコックピットの中で、空気調整機の空気を循環させる低い音が絶え間なく流れていることを除いては。
音もなく、目の前のモニターが 敵機と、敵重巡洋艦と、同じく直掩機が数機あることを知らせてくれた。父の愛機であったこの雷撃機は私と父の絆でもある。兄、弟と先の侵略戦争で宇宙そらから還らぬ人となった、だから父は残った娘の私を徹底的に鍛えあげた、母星の再興をかけて。この今握っている操縦桿が折れ、ペダルが磨り減るほど、気の遠くなるほどのドッグファイトと、タッチアンドゴーを繰返し甲板が割れるかと思うくらい。それほど鍛え上げられた、女を忘れるぐらい。
何時だったろうか、そんな最中、どういういきさつかは詳しくは分からないが、ある勢力が、再興の手助けを申し出て来たと言う。重臣たちは、其の申し出に賛成、反対真っ二つに割れたという、当然だ、見返りとして、今回の合戦に唯一の王族の生き残りの姫様をのせて弩級戦艦をある区域まで運ぶことが条件だからだ。姫様を人質として乗せれば、大事な姫様が乗っている軍艦を死にものぐるいで守ろうとするだろうから。と、忠臣である父は、当然猛反発したが、佞臣に言い包められたのか、姫様は最後の決断を下した、その条件で委ねると。そして、今、彼方で父は、姫様が乗っておられる弩級戦艦を守りながら、名乗りをあげた傭兵と一騎討ちを繰り広げている。口惜しくも、わが父は、落ちぶれても、その名も、轟く由緒正しい、名の有る将軍だ、名家である、それが賤しい傭兵と一騎打ちとは!操縦桿を握っていた手にギリッと一層力が入った。と、いつの間にか、重巡洋艦が射程内に入った、直掩機が四方から襲ってきたが、父との稽古のほうが楽と思うほど、全機瞬殺撃墜し、その返す刀で巡洋艦を3発の爆雷で沈めた。機首を姫様の弩級戦艦に向け全速で護衛に回った、その間も父と、名も知れぬ傭兵との一騎打ちは続いていた。そこへ、父から暗号通信が入ってきた、この勝負は私の負けで終わるだろう。それと同時に、姫様はこの傭兵の元に下るだろう、お前はこの傭兵と共に姫様を守れ、我々は、再興を申し出た連中に騙された、しかも身内からも、保身のために佞臣たちは姫様を売ったのだ。そしてその名を何人か上げた。さらに続けてこう言った、弩級戦艦は新型の次空振動弾だ。そうとばれないよう、偽装する必要があったのだ。最後に、娘として、扱ってやれなくて申し訳ない。と謝罪の言葉を言った。今まで、そんな言葉など聞いたことのない私は、初めて泣いた。弩級戦艦がすぐそこまでだが、滲んで見えなかった。お前は不服だろうが、この傭兵は武士らしい武士である、そこを見込んで姫様を託したのだと。後を頼んだぞと、通信が切れた刹那、父の艦は沈んだ。喉が枯れるくらい父の名を何回叫んで泣いただろう。
ほどなくして、弩級戦艦からポッドが射出されたようだ、その軌跡が、弩級戦艦に近づいているラチス構造の古い型の艦に吸い込まれるのを確認すると、私はその傭兵の艦に方向に機首を変え、追尾を開始した。
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