第9話

「あの日、起きてたの?」


屋上に着いてからの一言目がそれだった。


「起きてた、愛と..シてたね...」


泣きたい。


「ごめん...酔ってたんだ」


辛い。


酔ってたからシてもいいの?


「本当にごめん」


「私達別れよう」


泣きたい気持ちを堪え、隼斗に伝えた。


手紙にも書いたが一応、ちゃんと口からも言ったほうがいいと思った。


本当は別れたく無い。


でも隼斗を見ると、あの日の事を思い出してしまって、辛い。


「もう終わりにしよ」


この言葉を言うって事は隼斗とはもう話せなくなるかもしれない。


でも、それ以上に私の心はズタボロにされたのだ。


「ぇッ」


いきなり、隼斗は私に抱きついてきた。


「凛、2年も耐えたんだよ。それで我慢しろって無理な話だろ」


「俺は凛が今でも好きだ。別れたく無い」


その言葉は嘘。


体目的って言っていたから。


思い返せば、私といる時より、愛といた時の方が幸せそうな感じがした。


あの時は幸せ過ぎてそんなのどうでもよかったのに。


「もう...辛いよ」


その言葉に私の堪えた涙は出た。


本当に辛い。


このまま付き合ったとしても、自分が不利なだけ。


「ごめん...本当に。ちゃんと話をしたいから部屋で話そう」


部屋?


隼斗の?


なんで行く必要があるの?


「なんで?」


キーンコーンカーンコーン


丁度チャイムが鳴った。


「じゃ、教室まで迎え行くから」


隼斗は屋上から出て行った。

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