第5話

湊side


俺は五十嵐 湊(みなと)


五十嵐組 若頭


24歳


その日、経営している店を周り終わり帰ろうとした時だった。


「若...と、トイレに行って来てもよろしいですか?」


側近の羽宮 蓮 (はねみや れん)がお腹を苦しそうに抑えて言ってきた。


「あぁ」


すみません!すぐに戻りますと言って、どこかへ走って行った。


蓮は俺の3つ上。


奥さんと子供が2人いる。


今は仕事モードで敬語だが、普段はダメ口で話す。


大人しく、顔もそこそこ良い。


まだ蓮は帰ってきそうもないので、煙草を吸おうとした。


ドスッ


その瞬間、誰かにぶつかられた。


「ぁっすみません」


すぐに謝ってきた。


そしてすぐに逃げようとした。


俺は女の腕を掴んだ。


この女、謝るだけで済ませる気か?


驚いた女はこちらを向いた。


初めて女に見惚れた。


透き通った白い肌、綺麗な顔。


綺麗な黒髪。


そして形のいい唇。


綺麗な女だった。


今までの女に、見惚れるなんてなかった。


「若、遅れてすみません」


走りながら帰ってきた蓮。


俺は女の腕を離し、車の方に向かった。


本当はこのままヤってやろーかと思ったが、あの辛そうな顔を見たら可哀想に思えた。


「蓮、あの女の顔覚えてるか?」


「はい。また゛害虫〝ですか?」


害虫とは群がる女を呼ぶ


「ぶつかられた」


「なにっ今すぐその女殺りに行きましょう」


「そんな事はしなくていい」


蓮は奥さん以外の女は嫌いだ。


「若がぶつかってしまったのは私のせいです、その女探して痛めつけときますか?」


「...見つけろ。だが何もするな」


何もしないでいい。


いつもだったら殺したくなるが。


今回は別だ。


なぜか気になるあの女。


確かに良い身体をしていたが、そんなのいくらでも抱いている。


「っわかりました、早急に探します」


蓮は少し驚いて返事をした。


まあそりゃそーか。


女をゴミのように使ってた俺が、その女には何もするななんてな。

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