もう、両思いなんだよ。

気づけば学校の屋上のプール。未来とプールサイドに腰かけて、足湯みたいにゆらゆらする。


「いやあ、そろそろ完成かな。ユイなんて、台本も覚えてなかったのに」


ふと見た左腕にはしっかりと包帯が巻かれてあった。


足の指の間をすり抜ける冷水が気持ちいい。


あ、ああ。そっか。未来が部活の紹介ビデオの話をしてることに気づいた。


過去の自分に恋をした女の子が、タイムリープして過去の自分を追い続ける、そんな話。未来はきっと――未来の私なんだろうな。ふわふわしながらそんなことを思う。


私が映画監督になりたいことも知っていたし、答えやすい質問にも変えてくれた。いつも長袖なのは、その下に私と同じ傷跡が残っているからでしょ?ずっと丹生未来は私のことを菊って呼ぶから。


そのファンデ、私とお揃いのほくろを隠す為じゃない?


もう、両思いなんだよ。

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