狂乱する新婦

気づけばあの公園。いつもは着ない純白のワンピースを着てた。お洒落して、ベンチで待ってる。多分これは、丹生ちゃんのことを。


私はおもむろにポーチからカッターを取り出した。


なんか、緊張とかドキドキとかで頭いっぱいになっちゃって、カッターのカチカチって音で安心する。何してんだろ、わたし。やめよ、やめよう。丹生ちゃん、くるから。


丹生未来、くるから。みらい、みく。


キラリと光ったカッターが、思いっきり私の腕を切り裂く。


いたい、やめよ、血、たれるから。ウェディングドレスみたいなこれに、よごれ、つくかもしれなかったりするから。


やめよう、やめ――「綺麗な赤色だね」


丹生ちゃんの声でハッとする。私、本当に何してるんだろう。急に頭がおかしくなったみたいだ。丹生ちゃんはゆっくりと、私の腕を取った。


「あーあ、もうそんな時期か」


小声でそう言ってた気がする。でも、本当に焦ってなんかなくて、右手に光るリングの冷たい感触に安心して。


「包帯、巻くからね。もうやっちゃダメだからね」


私の腕にしっかりと包帯を巻いてから、丹生ちゃんはスラリと手を繋いだ。


「ワンピース、かわいいね。ウェディングドレスみたい」


私が言われたかったことをそのまま言って、ゆっくりと右手のリングを抜いた。そして、私の同じ位置へと、リングがはまる。


「ふふ、もっと可愛い」


サラサラしてる、暖かい小さな手。私よりは大きいけど、やっぱり女の子な手。同類だよって、ひとりじゃないよ、って言われてるみたいだ。


「行こうか」

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