第7話



「…あのね…もう一回、乗ってもいい…?」




もう遅いし、迷惑だったらどうしよう…とドキドキしながら、横に立つヒロの顔を見上げてみた。




一瞬ビックリした顔をしたけど、すぐ笑顔になって、





「もちろん」




って、ヒロも運転席に座った。




「…あの、ね……」




言うよ、私は。

ヒロになら、言えるよ…言える…よ、ね…




そう思いながらも、次の言葉が出てこない。




いきなり、「ヨッシーの彼女は風俗嬢です」とは露骨過ぎるし。




何から話せば…

どんな言葉で伝えれば…




呼び戻した申し訳なさも手伝って、さらに思考が働かない。




適切な言葉がこんなにも思いつかないって…自分のポンコツ具合にあきれるわ。




どうして私の頭はこんなにバカなんだ⁈




なにか言わなきゃ…と焦ってヒロを見ては、言葉に詰まって目を逸らす私に。




「さっきさ、早過ぎ…て、溜息ついたでしょ」




全然関係ない話を始める。




…えっ⁈

聞こえてた⁈




「…えっ、違っ、悪い意味じゃ…」




慌てる私に、いたずらそうに笑う。




「ちゃんと聞こえてんだよ。まぁ、せっかちなんだよな。ガーっと前に進むしかできない。」




「えっと、そうじゃなくて…すごいな~って…私には絶対ない能力だから…」





「そうか~?俺はマイみたいなの、羨ましいけどね。」




「えぇっっ!?どこが…」


鈍くさくて、弱虫で、自分でも嫌になるのに。




「すごく優しいんだと思うよ?ちゃ~んと、周りに気を使えるでしょ。相手に嫌な思いさせないか?誰かを傷つける言葉じゃないか?とか、考えてから口にできるんじゃない?」




スーっと、心が軽くなっていくのがわかった。




…なんだ、お見通しか…




適切な言葉を探してる私も。

それに焦る私も。




ヒロは全部見抜いてるんだね?

そういう意味だよね?




その上で、私を優しいと。

迷ってるのも、なかなか言えないのも、優しさからだと、言ってくれてるんだよね?




それなら…




ゆっくり、言葉を探しながら…

やっとで言葉を繋ぎながらでも…




ヒロは理解しようとしてくれるよね。

そう感じて、

やっと・・・重い口を開いた。

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