綺麗な人

第3話


夕方。




待ち合わせ場所になっている、このコンビニに、ヨッシーの仲間が次々と集まってきた。




ヨッシーの、大学の友達が3人と、彼女さんの友達が3人。




ハイテンションのヨッシーは、嬉しそうに全員を私に紹介してくれた。





私に紹介したかったと言っていた、いいヤツ、ヒロさんは。




ヨッシーがみんなと駐車場へ出て行っても、ずっと私とおしゃべりをしてくれて。




出身高校が近かったり。

読書が好きだったりと。

共通点が多くて会話が途切れず、私にとっては、ただただ楽しい時間でしかなかった。




ヒロさんって、うちの高校の近く、西高に通ってたらしくて。

コンビニの制服から出てる、私のスカートを見て、

「附属だよね?その制服」って聞いてきた。




「え?知ってるんですか?」




「俺、近くだった。西高」




「わ、すごい」

この辺で1番の進学校だ。

たしか、男子校だったはず…




「いや、附属の人、羨ましかったんだよなー。制服もオシャレだし、カップルも多くてさ。なんか、キラッキラして見えて。俺ら、同じ駅で降りんのに、だっさいイモ男ばっかで。」




「ふふふっ、イモ男って…」




でも確かに、真面目で、落ち着いてて、ひたすら勉強してるイメージ。




うちはほとんどの生徒がそのまま大学へエスカレートだから、みんなあんまり勉強しないし。




そもそも、大したレベルの学校でもないし。




勉強より恋愛?

みたいな、ちょっとチャラチャラした派手めな高校だ。




その中でも私なんて1番下のクラスだし、ホント勉強苦手だから…頭良い人が羨ましい。




イモ男って卑下するヒロさんに、




「西高のほうが羨ましいです。入りたくても絶対入れない、あんな頭良いとこ」




「いやいや〜。名乗るのが恥ずかしいくらい、ダサいとか、暗いキモいって言われるんだよ?結構。」




「ええっ⁈…なんで…え〜…尊敬しかないのに…」




「ふふっ、ヨッシーの言うとおり、優しいよね、マイちゃん。何言っても嫌な顔しないし、笑ってくれるって、あいつ、よく褒めてる」




「えー…ヨッシーがそんなこと言うなんて…」




「意外でしょ?辛口のあいつが、マイはマジでいい子だよ、って…




私達の会話を、

「ヒロー!置いてくぞー!!」

ヨッシーの大声がさえぎる。




気づけばもう、皆の姿がない。




「…うるせぇな、ったく…」




すぐ行こうとしないヒロさんに、私が引き留めてるのか心配になって、謝ってしまう。




「…あの…ごめんなさい、私が…




「いやごめん。行きたくないだけ。」

かぶせるように言いながら、出口へ向かうヒロさん。




ドアの前で振り返って「また話そ!」って笑顔見せたかと思ったら、




私が「はい」の「は…」しか言ってないうちに、もう、ヨッシーと合流してるし。




え。




…なんなんだ…?




早すぎん?




ヨッシーもヒロさんも、なんでそんなテキパキしてるの??




駐車場でつつき合うヨッシーとヒロさんを見て、感心してしまった。




フツーの大学生だよなぁ。




勉強だけしてきました、みたいな痛々しさはないし。

勉強以外知りません、みたいなカタブツ感もない。




私みたいな高校生にも、見下したりバカにすることなく、話してくれるし。




しっかりしてて、頭よくて、優しくて。




そんな完璧、ある⁈




って…あるんだな〜。目の前にいるんだな〜。




男性陣が良い人集団だっただけに、女性陣の冷たさが余計引っかかる。




女同士だからわかる、あの、マウントを取った感じ。




男の人の前では出さない、威圧感。




こんにちは〜って、優しく微笑むけど、目の奥が笑ってない。




女の子なら絶対にわかる、この感覚。




ナチュラルに見せかけた、しっかりメイクとか。

甘ったるい話し方とか。

お花が咲き誇ったような香水とか。




磨き上げられた、すごくすごく綺麗な人なんだけど。





でも、でも…




私の中で、黄色信号が点滅してる。




あの人ダメって。

NOサインを出してる気がする。




なんか…違う




なんとなくの、この違和感…




間違ってない気がする、けど…




でも今回だけは…ダメだよ…



ヨッシーの為に…




どうか、私の勘がハズレていますように。

私が間違ってますように…





お願い。

ヨッシーの為に…

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