第36話

もう・・・






自分の気持ち、完全にわかってるのに。

ズルズルこのままなんて、ダメだよね・・・。







『決めるのはアカリだよ。』

ユミの言葉が、弱虫な私の背中を押してくれる。







『彼氏がダメな時は俺が・・・』

しゅんくんの言葉が、安心と勇気をくれた。







ユウジに別れを告げるのは怖いけど。







でも、もう・・・限界・・・







しゅんくんを想いながら、ユウジとキスをして、抱きしめられるなんて・・・絶えられないよ・・・。







今はもう、恐怖心しかないユウジ。







『どうやったら別れられるか』そればっかり考えながら、それでも続けてきた。







拒むと怖いから。







好きって言ってないと、本心がバレてしまうから。







愛してるふりをして、幸せな彼女の演技をしてきたんだ、ずっと。







もう、気持ちなんかないのに。







怖いから、従ってきただけなのに。







それをユウジに気づかれないよう、ずっといい子を装ってきた私は・・・なんて汚いヤツ・・・







ここまで嘘を通せた自分を。

演技を通せた自分を、嫌悪感が襲う。







ユウジと別れてないまま、しゅんくんと幸せな時間を過ごしてる。






会いに来たしゅんくんに、抱きつきたくなるのを、理性で抑えてる。






すぐ横にいるのに。

目の前にあるのに。

触れられない・・・






帰るしゅんくんの袖をつまんで、『帰らないで、寂しいよ』って言いそうになるのを、ギリギリで飲み込んでる。







こんなこと・・・これ以上、続けたくない・・・








でも、簡単には別れられない、絶対。







何をするかわからないユウジに。







いつ言うか?

どう言うか?







決断できないまま、それでも私は静かに動き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る