第30話

「えっ、いないの!?あ~、作らないんだ?」







「バ~カ、できないんだよ!」







「モテ過ぎて選べないとか・・・」






「何言ってんだよ!俺もいろいろあんだよ。そんな簡単じゃない・・・」






しゅんくんの声が、少し寂しそうだった。







「・・・優しい人って、そうなのかも知れないね・・・」







「なにが?」







「しゅんくん優しいから・・・。みんなに頼られちゃって、『みんなのしゅんくん』みたいになっちゃうのかな・・・」







「・・・そう見える?」







「うん。」







「アカリ、と、ユミちゃん、だよ?」







「・・・なに?」







意味がわからなくて聞き返した。







「だから・・・アカリはアカリ。ゆみちゃんには、ちゃん、つけてるでしょ?別に、みんなに同じ扱いしてるわけじゃないんだけどなぁ。」







ちょっとわかってしまった気がしたけど、気づかないふりをした。






というか、気づかないままにしておきたかったから。







「でも・・・私にもユミにも優しいよ、すごく。」







私が全く気づいてないと思ったのか、しゅんくんは、さらに言う。







「ユミちゃんは、アカリの親友だからだよ。一応、アカリにだけ優しくしてるつもりなんだけど・・・」







ドキッとした。







(ダメ、これ以上、聞きたくない・・・)







聞いてしまったら、現状維持ができなくなる気がする。

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