第28話

「・・・彼氏はそう思えないんだけど、しゅんくんは・・・」







「らくちん、か?」







「うん・・・」







「ドキドキがないからじゃ~ん?なんて、な。いいけどね、そういう存在も。」







「ごめん。らくちんなんて失礼だね」







「まぁ、いいよ。彼氏には気を使っちゃうみたいだしな。俺の前くらい、らくちんでいればいい。」







頼もしい、しゅんくんの声に。







じんわりと、私の心に安心感が広がっていく。







任せとけ、と。

安心してていい、と。






そう聞こえてしまったから・・・。







きっと。


ドキドキが『ある・ない』の違いじゃない気がする。







ユウジにだって、別にドキドキしてない。







それでもユウジの隣で、

『ラクだな・・・』なんて癒されたことはない。


『幸せだな・・・』って心から感じたことも・・・







いつも気をつかって、顔色を伺っているように思う。







ユウジのイライラに触れないように。







ユウジの嫌がることは一切しないようにしてきた。







友達と遊ぶのも、バイトも習い事も・・・どれもやらせてもらえなかった・・・







「・・・私ね、彼氏のお財布預かってるんだよ・・・」







「ん?なに、急に?」







「・・・彼氏とね、なんか・・・好きとか嫌いじゃなくて、離れられないって言うか、逃げられない、って言ったらちょっとオーバーかも知れないけど・・・」







「逃げられない?」







「お財布もね、本当は嫌なんだけど

『どうしても!』って押し切られて・・・お小遣い制って言うのかな。毎月、これだけ、って分しか自分で持たなくて、あとは全部私にハイ、って・・・」







「へぇ~、すごい信頼だね。夫婦みたい。」







「・・・信頼じゃないよ。全部渡すから、バイトしないでって」







「えっ!?バイトまで禁止されてるの?」







「バイトしたら毎日会えないし、出会いがあるからダメって・・・」

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