第2話

「…アイスバーンだもんなぁぁ…はぁぁぁ…もうっ…」


車の傷を眺めながら、溜め息まじりに自分のおでこをペシペシ叩いてる彼がいた。







「…はい…?」







怒鳴り飛ばされるくらいの覚悟で顔を上げたのに。







「…そりゃ、滑るよなぁ…」って。





拍子抜けした声で、


「…あぁ、はい…」


ユミが相づちを打ってる。







(・・・怒んないんだね・・・?)







横にいるユミに、目で訴えると、







(車、ぶつけられたんだよ!?)

(普通、怒るよねぇ・・・)







ユミも、不思議そうな目でそう訴えてきた。







キョトンとしてる私達に彼は、







「スキー場、あんまり来ないの?」







普通の顔して話しかけてくる。







・・・実はこの質問・・・痛いトコ突かれて、答えにくいんだけど・・・







「・・・今日、初めてで・・・」






申し訳なさそうに答えたユミに、







「初めて~!?…マジかよ…」



諦めたような苦笑いを浮かべて、彼が言った。







「・・・すみません・・・」







免許とりたてなのに、勢いだけでスノボへ来てしまったユミと私は、大反省して小さくなる。







「取りあえず、免許証見せて。あと、保険と…」







男性に言われて、ユミは自分の車に戻って行った。







取り残された私に、その男性は、







「都内なんだ?」って、







ユミの車のナンバーを指差して言う。







「はい…すみません…」







居心地の悪さに、つい謝ってしまう。







「しかも、初心者だもんなぁ。よく来たよ…」







呆れたように言ったから、







「…本当に…すみません…」







謝って、うつむくしかできない。







ユミはまだ何か探してて、戻って来ないし。







(ユミ、早く来て~。ヤバイよ…私、この状況に耐えられない)







車ぶつけちゃった相手と二人なんて、居心地悪過ぎる。

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