第9話

何度も何度も打ち直して、


わずかに震える手で送信ボタンを押した。






[私、娘と二人暮らしなの。仕事とジムの時だけ娘を保育園に預けてるんだけど、それ以外は、いつも子供と一緒。]








いままでだってあった。



優しく近づいてくる人が・・・






子供いるように見えないらしい。


たぶん、幼く見える、この顔のせい。






それでも・・・





私は、娘と一緒じゃないなら、会わないから。






それを知って、離れていく人ばかりだった。






(・・・そんなもんなのかな・・・)






離婚が珍しくない時代になっても、


シングルマザーへの風当たりはまだまだ冷たい。








『子供がかわいそう』と。



『我慢がたりない』と。








旦那の記憶が、今でも胸をチクリと刺す。






大好きだったのに・・・


離婚したくなかったのに・・・


どうにもならなかった・・・










きっと、こうすけともこれで終わり。









返信はこないはず、と思っていたのに・・・


受信音が鳴った。







[びっくりしたー!子供いるんだね!さやかに似てる?]







(返信・・・きた・・・)







屈託のないメールに、私のほうこそビックリしてしまった。






[どうかなぁ?でも、私と違って、娘はおしゃべりだよ(笑)]






[そうなんだ~。オレでも話してくれるかなぁ?]






[初対面の人でも、全然大丈夫なの。びっくりするくらい]






[へぇ~。いつか、会ってみたいな。でも、さすがにジムには連れて来ないか。]






こんなやり取りを、ずっと続けた。






本当の私を知っても逃げないこうすけだから。






ただの友達だとしても・・・



きっと、ずっと続いていける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る