アドレス
第6話
ジムの後、半信半疑で休憩室をのぞいた私は、本当に待ってたこうすけの姿を見つけて、胸が痛んだ。
どうして本当に待ってるの・・・?
私は、理由も言わず断ったんだよ?
ここで、何度も一緒に過ごしたのに。
ご飯行くくらい、仲良くなってたはずなのに。
それを、断ったんだよ?
アドレスさえも、教えないんだよ?
何事もなかったように、こうすけのところへ行くことができずに、私は入り口で固まっていた。
そんな私に気づいて、
おいでよ、と手招きするこうすけの笑顔が。
引きつって見えるのは気のせいだろうか・・・?
呼ばれるまま、私はおずおずと、こうすけの前に座ったけど。
どちらからも、何も言わない。
こうすけはきっと・・・私に断られるなんて思ってなかったんじゃないかな。
ここで仲良くなって・・・この外でも会うようになって・・・連絡先を交換したり、家へ来たり・・・そうやって、進んでいくはずなんだよね。
それがどこかで止まったら・・・そこでおしまい。
実らなかったってことになるんだよ?
私はそれをわかってて・・・止めたんだ。
これで終わり、と。
実らなかったってことだと・・・示してるんだよ?
それなのに、どうしてまだ待ってるの・・・?
そんな思いがぐるぐる頭の中をまわっていた。
二人、黙ったまま、どのくらい経っただろう。
「ここでなら、いい?」
遠慮がちに、こうすけが聞いてきた。
「えっ・・・?」
聞き返す私に、
「今までのまま、ここで話すだけなら、大丈夫?」
しっかり私の目を見て、こうすけは、はっきり言った。
(・・・どうして、こうすけ・・・)
きっと傷ついてるはずなのに。
それでもまだ、引き止めるの?
「・・・どうして、そんな・・・」
諦めないこうすけがわからなくて、疑問の顔を向けた私に、こうすけは苦笑いして言った。
「どうして、だろう・・・。自分でも、やめときゃいいのに、って思ってるよ。バカだなぁ、って。けど・・・」
そこまで言って、長い沈黙。
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