ヤれれば

第29話

俺の部屋から美咲が飛び出していった後も、パニックが続いていた。







(・・・別れたい?)

(・・・美咲が、浮気したって?)







頭が混乱して、よく理解できない。







反面で、妙な落ち着きも、あった。







ショック過ぎたからだろうか・・・?







取り乱さずにいられる、冷めた自分。






(え~っと・・・どういう事だ・・・?)







美咲の言葉を復唱しながら、状況を把握しようとしてみる。







別れたいって・・・言ってた・・・?


浮気したって・・・


んで、あいつ・・・帰った、っけ?







逃げるように帰って行った美咲を、思い出す。







帰った・・・よな?







本当に・・・帰っちゃったんだ・・・?







(・・・ちょっと待て。)

(別れたいって・・・?)

(うわき・・・ってなんだ・・・?)







時間が経つほどに、頭の整理がついてきて、美咲の言葉を理解し始める。







別れるなんて、ありえねぇだろ?

俺達、うまくいってたじゃねぇか。

そうだろ?







就職の事でケンカはしてたけど・・・そんなんで壊れるはずないよな?







・・・きっと・・・







『拓のバーカ』


って・・・すぐ戻ってくるんだろ?







『冗談に決まってるでしょ!?』って

『バッカじゃない!?』


って笑うんだよな?







・・・美咲・・・







嘘だろ?






戻って来いよ・・・

嘘だって笑えよ・・・







・・・それでも・・・







何日過ぎても、美咲から連絡はなかった。







一週間後には、美咲のアパートに置いてあった俺の荷物まで、送り届けられてきた。







どこまでからかうつもりだ・・・?


冗談がキツ過ぎるよ・・・。








・・・本当は。


あの日の真剣な美咲から、冗談じゃないことはわかってる気もする。







でも・・・これが冗談じゃなくて、受け止められるわけないだろ・・・








・・・初めて美咲を抱きしめた夜・・・

小さく震えてた体を思い出して、俺は発狂しそうになった。







無理だ。







俺にはこんな現実、受け止めきれない・・・

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