歪んだ気持ち

第26話

取り残された駅で一人、人目も気にせず泣き続けていた。







「美咲ちゃん・・・?」


ふいに名前を呼ばれて顔を上げる。







電車から降りてきた人込みの中に、大学の友達の顔があった。




「・・・高橋くん・・・」







「どうしたの?こんな所で」







見慣れた友達の顔に、全身の力が抜けていくような感じがした。







張りつめていた糸がプツンと切れたように、一気に安心感が押し寄せる。







「・・・高橋くん・・・っ、私もう・・・」







泣きはらした私の顔を見て悟ったのか・・・







「送って行くよ。俺、車だから」







支えられるように、二人で駅を出た。







拓のことばかり考えていて・・・


頭がクラクラするくらい、泣いてしまっていたから・・・







思考回路がおかしくなっていたのかも知れない。







正常な精神状態じゃなかったんだ。







・・・じゃなきゃ、あんなコト・・・







高橋くんに送ってもらって、私の部屋で一緒に飲んでいたのは覚えてる。







愚痴りながら、泣きながら、すごいピッチでグラスを空けていったように思う。







その辺から記憶が曖昧で・・・







翌朝・・・高橋くんの腕の中で眠る自分に・・・凍り付いた。







(まさか・・・いや、でも・・・)







必死で、途切れ途切れの記憶をたどる。







(そんなこと・・・あるはずない・・・)

(だって私は、拓じゃなきゃ嫌・・・)







そう思うのに。







記憶の片隅に・・・


高橋くんの重みが残ってる・・・

私にかさなる、拓とは違う記憶・・・







二つの枕が並ぶ、このベッドで・・・







昨日まで、拓が来てたこの部屋で・・・







(・・・どうしよう・・・)







拓が大好きなのに・・・

拓じゃなきゃ、イヤなのに・・・







(私は拓を裏切ったんだ・・・)







寝息をたててる高橋くんの腕の中で、声を殺して泣いた。

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