第22話

あんなに寂しかった美咲との遠恋も。







今は楽しいと思える。







毎日めいっぱい好きな事をやって。







そして、月に一回、美咲に会いに行く。







一ヶ月分を埋めるように、美咲を抱きまくる。







それから・・・帰りの新幹線の中で、翌日のカメラの事を考えてる。







充実した、完璧な四年間だったと。







自分では、そう思ってた。








好きな事をやりながら・・・就職まで引き寄せられたんだから・・・。







『このまま、ウチに来ないか?』







バイト先でかけてもらった言葉に、何の迷いもなく、即答した。







嬉しくて、嬉しくて、小さくガッツポーズをした直後に、チラッと美咲の事が頭をよぎったけど・・・







でも。







こんなチャンス、二度とない。







・・・大丈夫。


美咲ならきっとわかってくれる。






俺の夢・・・


美咲ならきっと応援してくれるはずだ。







俺の就職を知ったサークルの仲間は、自分の事のように喜んでくれた。







『すごい!すごい!』と賛美されて、俺はすっかり良い気分になっていたんだ。








美咲にもすぐ電話しようと思ったけど・・・







こんなビックニュース、美咲はどんな顔するかな?







『拓、すごーい!』って、とびきりの笑顔で抱きついてくれたりして。







(あいつには、会ってから言おっかなぁぁ~)







なんて・・・







俺は、ウキウキと甘いことを考えてたんだ。







次の土曜日。







はやる気持ちで、美咲のアパートへ向かった。







俺の頭には、喜ぶ美咲の顔しかなかったんだ。

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