戻らない

第21話

夢中になってるカメラで、バイトができる。







もちろん、カメラなんて全然いじれないけど、でも、でも・・・







本物のカメラマンのそばで、仕事が見られると思うだけで、飛び上がるくらいに嬉しかった。







俺の知らない世界。


知りたい事、学びたい事がいっぱいある。







実際に始まったバイトは、かなりハードなものだったけど、それでも充実した日々だった。







毎日が必死で、でも、めちゃくちゃ楽しくて。







夢中な毎日を過ごしていたんだ。







美咲のことさえ忘れるくらい・・・







今思えば、あの頃から俺たちの歯車は、少しづつズレ始めていたんだろう。







一日を精一杯に過ごす俺には、そんな事に気づく余裕なんかなかったけど・・・







美咲の気持ちにも、まったく気づいていなかった。







もちろん、美咲のことは大好きだ。







けど、カメラも大好きだ。







どちらも・・・







俺には不可欠なモノで。







ずっとあるはずのモノで。







消えるはずなんてない、俺の大切なモノだと・・・。







好きなモノを二つも手にして、俺は少し傲慢になっていたのかもしれない。







怠っていたら・・・

油断してたら・・・







ずっとなんて言葉、あり得ないんだってことを。







あの頃の俺は、知るよしもなかったんだ・・・。







大学のサークルと、アシスタントのバイト。







それから、月に一回の美咲。







いつの間にか俺の大学生活は、夢と希望で満たされたものになっていった。







美咲は相変わらず、遠恋を寂しがっていたけど。







大丈夫だよ。







俺と美咲なら。







壊れるはずない。







ダメになるはず、ないじゃん。







こんな強い気持ちがあるんだから。







寂しがる美咲に、




『大丈夫だって~』




俺は、笑顔を見せる余裕まで出てきていた。

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