第15話

・・・付き合いだしてから・・・







今までと違う美咲を次々と発見する。







いつもみんなの中心で、明るく笑ってる美咲が大好きだったけど。







こんなふうに・・・







俺にしか見せない、弱い美咲もたまらなく愛しいと思う。







愛しいから。







放したくないから。







美咲を実感したくなる・・・。







離れてる不安を消すように。

離れてても近くに感じられるように。







「・・・美咲・・・顔上げて?」


俺はそっと顔を近づけた。







美咲を一人じめしたい。







俺だけの、美咲でいて欲しい・・・







不安の残る顔のまま、俺を見上げた美咲に心の中で問いかけた。







(いいよな・・・?)

(付き合い始めてまだ短いけど・・・)







美咲の服に手を滑り込ませた俺に、







「あっ、ねぇ、拓・・・。

拓は・・・前に彼女いたよね・・・?」







(・・・なんで今、そんな話・・・)







「まぁ・・・」







適当な返事をした俺の手を、美咲がつかむ。







(俺、拒まれてる・・・?)







ちょっと傷ついた顔で、美咲を見ると、







「・・・ねぇ・・・その子と・・・」







美咲は不安そうな顔をしてた。







「・・・あの・・・その彼女とも・・・」







(したのか?って?)

(お互いのそんなこと・・・聞いてどうすんだよ・・・)







「・・・俺は気にしないから・・・。

美咲の過去を聞いても、イヤな気持ちになるだけだし・・・」







本当にそう思った。







美咲がモテてたのは知ってるし、

それに・・・俺だって初めてじゃないし・・・







なのに、美咲は


「ううん・・・」


と、首を横に振る。







「・・・いないの。」







「え?」







「今まで一度も彼氏、いたことない。

だから・・・何にもない。」







美咲が突然こんな話をした意味がわかって、







「・・・ごめん・・・」







素肌に触れていた手を引っ込めた。







「あっ、別にそんなつもりで言ったんじゃ・・・」







「うん、わかってる。

でも俺、焦り過ぎだ。・・・ごめん。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る