第10話

明るくて、人気のあった美咲の・・・







『男友達の一人』になるくらいなら、俺はこのまま忘れられちまったほうがいい。







「・・・裕太にも聞いた?裕太んトコにも遊びに・・・」







裕太も、俺とは違う場所で一人暮らしだ。







「はぁぁ~・・・」







ため息を吐きながら、美咲の眉間にシワが寄ってる。







「・・・拓、そんなんでよく大学受かったよね。」







「はっ!?」







「ほんっと、バカ・・・」







ムッとした声で、呆れたように美咲が言う。







「はぁっ?なんでバカだよっ・・・?」







「裕太になんか聞いてないよっ!

行かないもん・・・!」







「ふぅん。」


(よかった・・・)







素っ気ない返事のわりに、内心、すっげぇホッとしてた。







そうだよな。

美咲がそんな簡単に、なぁ?







俺はアパートの住所を書いて、美咲に手渡した。







美咲は・・・







何も言わずに、ジッと俺を見てる。







「・・・なんだよ?」







「・・・あのさぁ・・・。

普通、聞き返すんじゃん?」







「何を?」







「美咲の住所!

美咲も四月から一人暮らし!」







「あ、あぁ・・・そっか・・・。

あ、でも一応、女の子んちだし・・・」







「・・・だし、なにっ?」







「いや、悪いかな~、とか・・・」







「もおぉぉ~っ!最低ー!!

ほんっとに気づいてないわけ!?」







「・・・は?」







美咲がジレてる意味がわかんなかった。







「拓の所、行くよ。私の所も教える。いつでも来ていいよ。

・・・ハイッ、これでどうっ!?」







美咲の赤い顔を見て、俺はやっと・・・やっとわかったんだ・・・







俺は・・・

相当な鈍感男だったんだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る