第3話 どうして
あれから数日。
今日も彼の食事を用意するため、厨へ向かった
中から聞こえたのは、使用人たちのこんな会話。
「ここ数日、
「やっぱりそう思う?私昨日、二回も怒鳴られたのよ」
「
——まあ、
平穏な時間が訪れているのは、どうやら自分と彼だけ。
しかし、その頃
「……どうして、」
その日も
「食事、持ってきましたよ」
「そこに置いておいて」
相変わらず冷たい彼の声音。
すぐに地下を去ろうとした
誰がやったのか察しがついたが、
「……今日、金髪の偉そうな女性、ここに来ましたか?」
「……来たよ」
——やっぱり、
「その火傷は、彼女に?」
「そうだよ」
「抵抗、しなかったんですか?それとも、できなかったんですか?」
彼の声を素っ気ないと思っている
「……できなかった。体力は大分戻ったけど、魔力がまだ全然」
それを聞いて、なら、と
「どうして、私を喰わないんですか?」
なぜ、悪魔である彼を檻の中に閉じ込めてまで生かしたのか。
そもそも人間、特に魔法使いと悪魔は、互いにあまり干渉しようとしない。
だが、悪魔の中には魔法使いを喰べてさらに魔力を得ようとする者もいる。
そういった悪魔は魔法使い、または同族である悪魔が始末し、逆も同じ。
それが人間と悪魔の関係である。
基本的に悪魔の方が魔力が強いので、今のこの状況は極めて稀だ。
「私を喰べれば、魔力の回復も少しは早くなる。なのに、あなたは私を喰わずに生かしている。それは何故?」
問いかける
「私を喰えば、ここから出す。そう言われているのでしょう?」
彼は何も答えない。いや、何と答えるか考えているようにも見えた。
「理由が無いのなら、早く私を喰ってください。もう、いいんです」
生きることへの執着がないのは、何も彼だけではない。
彼は、予想と全く違う言葉だったのか、俯いていた顔を上げた。どうしてそんなことを言うんだという顔で。
それからややあって、彼が語ったのは、自身の過去。
「……俺は、悪魔の中でも上の方の家の生まれで、だけど、俺は魔力が弱くて落ちこぼれだった。でも、数週間くらい前のあの日、突然魔力が目覚めて、」
この檻に捕らわれるまでの話だった。
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