9 パーティ結成

 高校生活が始まって2週間が経とうとしているある日のこと。

 いよいよ二人を引き連れてギルドに来ていた。

 

「鷹野紗理奈さん……彼女の実績であれば、F級となります」


「やった!実績残しといてよかったー」


「これでパーティランクもF級となりますので……相応のダンジョンに潜れますね。もっとも、初陣はG難度のそれを推奨します」


「ありがとうございます。……それと、パーティ名も決めてよいでしょうか?」


 無愛想な俺でも、年上や立場が上の人に対しては敬語くらいは使える。

 あとは……マスコミにもだ。

 あることないこと書いたマスコミは評価を下げた。俺の言った失言のようなものをそのまま報道したメディアは……俺が悪いからな。仕方ないので評価据え置き。

 俺を良く取り上げたメディアは……記者の態度によるものが多かったな。

 とはいえ、どんなメディア相手でも進んで無礼を行う気はない。


 やるとすれば……そのメディアの偏向報道により名誉を失いそうになった時、だろうか。

 その時は徹底的に潰す気でやる。

 無論、その時に必要なだけの影響力を得ていたらの話にはなるのだがな。


 それより、パーティ名だ。今まではなんとなくいらないかなとも思っていたが、三人ともなれば出世のスピードも高まるだろう。

 そうなれば、我ら三人を総称する名も必要になるだろう。 

 

「……C級に上がるまで変更はできませんが、よろしいでしょうか?」


「ええ、構いません。ただ、申請は三人で相談してからになりますが……よろしいでしょうか?」


「はい、もちろん」


 それから三人で会議することになった。


「俺たちは他の冒険者と比べたらトントン拍子で出世することになるだろう。これは舐めているのではなく、事実を俯瞰しているだけだ。冒険者学校出身ではないゆえ、初期の等級が低いせいではあるが。それに……俺が男であるからそのせいで足を引っ張ることもあるかもしれんが、逆もありうる。その際にハッタリの効いた名前がなくては締まらないだろう。なにか案はないだろうか?三人で出し合おう」


「『二人の愛の巣』、というのはどうかしら?」


「それ、ワタシをのけ者にしすぎじゃない?……いや、秀紀くんを奪ったりする気はないけどさあ。それは流石にどうかと思うよ?」


「却下、だな。流石にそれは……」


「むぅ。なら、ぎゃーくの考えた案はどうなのかしら?」


 ぎゃーくというのは俺のあだ名だ。逆本だから、ぎゃく、そこから発展してぎゃーく。

 独特なネーミングセンスだと思う。


「……俺か?自信がないな……」


 かと言って俺にも良い案は思いつかない。


「では……『龍造寺四天王』というのはどうだろうか」


「龍造寺さんって誰?あ、どっかの有名なお寺?……ワタシたち三人なんだけど」


 この世界では龍造寺家どころか織田家すら存在しない。苗字としては存在するが、戦国大名織田家などは在りえない。そもそも世界地図からして違う。

 通用しなくて当然だ……なぜ最も適さないものを選んでしまったのか。

 これならば、同じ伝わらないものであっても風林火山とか毘沙門天とかのほうがなんとなくかっこよくてウケが良かっただろう。

 こういう系統なら第六天魔王とかでも……ああ、そう言えば俺はネットで魔王様などと言われていたのだったな。

 ならば、それでもいいのか?ヒントを得た。


「五人揃って四天王……ではなく、三人揃って四天王というノリだったのだが。気に入らんか」


「あはは、ちょっと良くわからなかったかな。でも、キミにもネーミングセンスっていう弱点があるって知れたのは少し嬉しいかも」


「? 俺など弱点だらけだと思うが……」


「まあ、女の目線からのガードが緩すぎる! とか色々弱点はあるけどね。それらは一応自覚してるじゃん? 自覚していない弱点を知れたっていうのが、少し嬉しいわけよ」


「……そうか。であれば今後、いくらでもそういうものは見つかるだろう。愛想を尽かされないかが心配だ」


「この子がいなくなっても私がいれば大丈夫だから、安心しなさい!」


「とかこの子は言ってるけど、ワタシもそんな気はないから大丈夫だよ。一度諦めた夢をもう一度見れるのはキミのおかげなんだからさ」


「それはありがたいな。ああ、素直に嬉しいよ。……そうだな、俺のネーミングセンスに難があるというのであれば、鷹野さんも案を出してくれないか?」


「うーん……『魔王様と下僕×2』、とか?」


「鷹野さんにもネーミングセンスなんて欠片もないじゃないか……。では、そこから修正しよう。『第六天魔王』というのはどうかな?」


「……賛成!それがいいわ!」


「第六天ってのはちょっとわからないけど……なんかカッコいいね!右目がウズウズする!」


「そうか」


 鷹野さんにも厨二病の素質でもあったのだろうか? 邪気眼とか言い出したら何としてでも止めねば……と、俺自身がこの世界では不治の病の厨二病のようなものか。

 それでは聞いてはもらえないな。

 パーティメンバー三人が全員厨二病か、なかなかに香ばしいな。


 そうならないよう、鷹野さんには良識的な人でいてもらいたいものだ。


 それから、受付のお姉さんには生暖かい目で見られながら、パーティ名を受理してもらった。

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