第14話 りさいくるしょっぷにかくれるぼく

 でも、やっぱりみんなやせている。やせているというかやつれている、って言った方がいいのかもしれないけど。ゾンビも栄養が必要なのかも。食べられなくなったゾンビはどんどんやせていっていつか動かなくなってしまうのかも。


 風が吹いてカラスのむれが空に飛び立っていった。さっきまでずっと電線にいたんだ。電気の通っていない意味のない電線がゆれている。小さなすずめもカラスの後を追いかけるみたいに飛んでいった。


 もしボクが空を飛べたら、こんなに苦労しなくてもいいのに。でも、もしボクが空を飛べたら、ボクはどうするんだろう? お母さんとお父さんをおいてどこか遠くに飛んでいくのかな。一人だけでゾンビのいない安全なところに逃げていくのかな。


 わからない。だけど、ボクはみんなでいっしょに食べるご飯が好きだ。ずっとずっと好きだった。今ならやっとお父さんとお母さんとご飯が食べられる。今までされてきたおしおきだって、ボクがみんなにできるんだ。


 行こう。お母さんに言ってきたし、新しいお父さんの体を探しに行こう。


 ボクは手をぎゅっとにぎると、走り始めた。かくれるところのない丸見えの交差点だけはどうしてもこうしなきゃいけない。もちろんゾンビは気がつくけど、動き出すまで時間がかかる。ゾンビの脳みそはくさっているから何をするか決めるまでに人間よりもすごく時間がかかるんだ。


 道路のまんなか、あちこちからゾンビのうめき声が聞こえる。のんびりしていたら、動いているボクに気づいて追いかけようとしてくる。もし、足が早いゾンビがいれば子どものボクなんてすぐに捕まってしまう。


 もう信号がつくことのない横断歩道を走り抜けると、ボクは近くのリサイクルショップにかけこんだ。ここのリサイクルショップの店長は、やる気がないのか誰も買わなそうな変な形をした家具やボクよりも大きいへんてこな人形やぬいぐるみばかりを集めている。かくれる場所はどこでもある。


 ボクは、いつもの不気味な笑顔をした白いぼうしをかぶったコックの人形の後ろにかくれてお店の入口を見つめた。この人形、とてもリアルでしかも古いものなのかあちこちトソウがはがれて一度見たら夢に出そうなくらいにコワい。でも、それよりコワいものが今はたくさんいる。


 電気のつかないお店のなかは、まっくらな夜のなかにいるみたいにとてもくらい。だから外の光がまぶしく見える。人間が消えてゾンビだらけになっても、太陽は変わらないんだってことを教えてくれるみたい。


 人間がゾンビになっても、たぶん地球はなにも変わらないんだと思う。だって食べるのは変わらず肉ばかり。それにゾンビは人間を食べてくれるし、ゾンビとゾンビも食べ合ったりしてる。人口は少なくなって、地球は動物たちが増えていくのかな。


 ゆっくりゆっくりとドクトクの足音が近づいてきた。平和に見える光のなかにこげ茶色のゾンビの顔が出てきた。

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