第2話

その船渠(ドック)には、大型船舶が入る準備が進んでいた。すでに扉船は入口から外され、船渠内部は港湾と同じ水位とされていた。

あとは入渠を待つだけである。

「今日はずいぶん水面に霧がかかってますねぇ」

「まったくだな。こんなに見通しの効かない日はめったに無いんだがなぁ...」

「今日の入渠は中止じゃないですかね?」

「まだ中止指示が来てないからなぁ。準備だけは進めるぞ。」

「また霧が濃くなってきましたよぉ...予定の船は来てないし..」

「ヤベえなぁ。対岸どころか、停泊ブイも見えないぞ。こりゃ危険だろうに。」

「中止指示、聞いてきましょうか?」

「ああ、そうしてくれ。」

 突然、霧の中から綱取りロープが飛んできた。

「船渠引込ロープ来ます」

「嘘だろ!何にも見えないぞ!」

「ロープ引け!」

「繋船柱に繋げ!押し込みタグボートに連絡は取れるか?」

「ロープ2本目来ます!」

「船首見えます...え?」

「何だ?ありゃ?」

「えっ?菊の御紋章?」

「俺...プラモデル作ると時、最後に金色に塗ってくっ着けた覚えが有るんだけど...」

「やけにデカくないか?」

「あのサイズって、海底で発見された大和...級?」

「海上自衛隊って事無いよな?」

「海自は御紋章無いよ。俺、かがの展示航海乗ってるし」

「じゃ、この船、何?」

「映画撮影用の特殊船舶とか?」

「リアル過ぎるだろ」

「何でも良い!係船及び船渠引込作業開始!」

「ドックへの進入速度を抑えろ!」

「タグボート!全速後進!」

「速度落ちます...」

当該船上でも騒ぎが大きくなってきた。

ドック長が息を切らせながら、走ってきた。

「ドック内に強行進入なんて...」

「扉船、定位置に着きま〜す。」

「何ですか?この船?いや、この艦か?」

「向こうが言うのは、帝国海軍軍艦大和だ..」

「「え〜...!?」」

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戦艦大和は生き残れるか? @kirishima2024

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