第14話 浮足

『一年前に転生したとき、星の海を裂いて降り立ったのは銀河系の辺境に築かれた水晶都市。そして今、大きく透明な結晶ゲートの格子が六軸に回転し、婚約者だった彼女が現れ、婚約破棄と追放を宣言した』


 SFの要素が異世界転生要素を融合させ、壮大な緊張感で幕を開ける。


『ところが、その彼女が突然俺に抱きつく。重なる唇の重力波が脳を痺れさせ、彼女の手が俺の体に触れるたびに体内のヒッグス粒子が励起する。星々が降り注ぐ量子空間の中、官能と興奮が交錯し、次元を超えた抱擁が始まった』


 愛さんとの協働の成果でいい感じのスタートだ。


「どうかな?」

「とても素晴らしいです。宇宙の描写が鮮やかで、高揚感がありますね。しっかりと読者を引き込む力があると思いますよ。あなたの成長が感じられます」

「おれたちの二人の成果だよ」


 愛さんの笑顔を見て、胸が温かくなった。


「ありがとう。本当に君がいてくれて良かったよ」

「ふふふ、他の参加者たちも活動を始めたようですが、この作品なら大賞を狙えますよ」


 〇ヨムコン開始直後から、普段沈黙勢たちも急に連続近況や読み合いレビューで通知を賑やかしている。宣伝に必死なのだ。でも、数か月前ににわか活動の虚しさを知ったおれ達は浮足立つことはしない。とはいえ……


「……どうしました?」


 愛さんが心配そうに尋ねた。

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